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土日の政治
その昔、田舎の小学校には、ジャイアンのようなガキ大将が大勢いたものだ。その号令で一斉にみんなが動く。いさかいやトラブルがあれば、だれが善でだれが悪なのかの判断まで下していた。たとえその結論が理論的でなくても逆らうことはできない。絶対的な権力を握っていたのだ。
そんな子供のルールが今、国家レベルで適用されている。最も厳格さが求められ、絶対に不正が許されないはずの捜査機関においても、ガキ大将の意向が大きく働いているように見えるのだ。
ジャーナリストの伊藤詩織さんが「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」として元TBS記者の山口敬之氏に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は山口氏に330万円の支払いを命じた。山口氏がレイプしたことを認めた格好で、裁判所が発行した逮捕状を執行しなかった警視庁と真逆の判断である。山口氏は判決を不服として控訴したが、2審も敗訴となれば、捜査の正当性は大きく揺らぐだろう。
当時の警視庁刑事部長で、山口氏の逮捕に待ったをかけた中村格氏の責任も重い。現在は警察庁でナンバー3の官房長を務めているが、週刊誌の直撃に逮捕中止の判断を下したことを認めている。民事で裁判所が事実認定したレイプ犯を野放しにしたわけだ。これは重大な失態で、普通であればクビだろう。少なくとも減俸や降格は避けられない。それなのに中村氏は現在に至るまでおとがめなしで、警察庁長官に昇格するという報道もある。レイプ犯を逮捕しなかったことも異常だが、そんな命令を下した人物が全国の警察を従える組織のトップになるというのも異例の事態だ。
精神科医の和田秀樹さんは自身のメルマガで〈伊藤詩織さんが民事裁判では勝訴した矢先に、中村格という警察官僚が警察庁長官に内定したという(まだ報じられていないが)ことで吉永みち子さんが怒っていた〉と書いていたが、良識ある人はみんな呆れている。
山口氏は安倍さんと昵懇の仲で、中村氏は菅さんの元秘書官で「官邸の番犬」と呼ばれているらしい。結局、ガキ大将の安倍さんに近いかどうかですべてが決まるわけだ。これが成熟した国家の姿なのか。中国やロシアや発展途上国でもあるまいし、法を超えたガキ大将が幅を利かす現状は、民主国家のありようからは大きくかけ離れている。
2020/01/11 06:00
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