19/11/21 14:28:44.51 cLHfTy+z0.net
【3次元空間宇宙と2次元平面宇宙と0次元点宇宙】
「向こうを見なさい」とわが指導者が言った。「君はフラットランドで暮らし、ラインランドの幻を見て、私とともにスペースランドの高みに上った。
今、その経験を完璧にするために、存在のいちばん低いところへ、次元のない奈落の底へと連れて行こう。点の王国、ポイントランドだ」
「向こうの惨めな生き物を見たまえ。あの点は、私たちと同じく生き物だが、次元のない深淵に閉じ込められている。彼自身が彼の世界であり宇宙なのだ。自分以外の概念はまったくない。
長さも幅も高さも知らない。経験したことがないからだ。
２という数さえ認識できず、複数が何であるかなど考えたこともない。彼にとって、彼自身がすべてであり、かつ真の無だからだ。しかし、彼は自己充足している。
そこから教訓を学ぶのだ。自己充足に陥ることは、嫌悪すべき無知であり、何も知らずになすすべなく幸福に甘んじるより、志を抱く方がましだ。
さあ、聞いてみたまえ」 球は話をやめた。
すると、ジジジと鳴いているちっちゃな生物から、小さくて低くて単調な、それでいてはっきりとしたチリチリという音が聞こえてきた。
君たちのスペースランドにある蓄音機から聞こえるような音だ。
その音から、こんな言葉が聞き取れた。
「そんざいこそが、むじょうのしあわせなり！ それがそんざいし、それいがいはなにもない」
「この小さき生き物の言う、〝それ〟とは何でしょうか?」とわたしは聞いた。