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大学入試改革を民間に丸投げする文科省の狙い
2019年10月26日 15時0分
教育再生実行会議が描いた改革の青写真
現役の筑波大学附属駒場高校の2年生に、センター試験に代わって2021年1月に最初の試験が実施される「大学入学共通テスト」の問題点についてインタビューしたAERA.dotの記事が反響を呼んでいる。
「大学入学共通テスト。ひとことで言えばこれは入試ではありません。入試を入試じゃなくする制度です」(筑駒生、大学入学共通テスト中止を訴える 「ぼくたちに入試を受けさせてください」AERA.dot 2019/10/25)
いま大学入試改革で何が行われようとしているのか、どんな状況にあるのかを極めて正確に把握し、その欠陥・矛盾・欺瞞を的確に突いている。
彼自身は何も困っていないはずだ。彼はその他大勢の同世代の高校生のために声を上げている。SNSには「これぞノブレス・オブリージュ」「こういうひとに官僚になってもらいたい」「文部科学大臣と交換したい」という声があふれた。
問題がこれだけ山積みなのに、なぜ文部科学省はこのまま突き進もうとするのか。なぜこんな無茶なスキームを構築してしまったのだろうか。
11月1日発売予定の拙著『大学入試改革後の中学受験』でも詳しく解説しているが、そもそも今回の大学入試改革は、政権を奪取したばかりの自民党政権下で組織された教育再生実行会議が2013年10月31日にまとめた「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について(第四次提言)」を青写真としている。
以下がその概要だ。
●センター試験について(番号は便宜上、筆者が付したもの)
(1)センター試験を廃し、代わりに「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」と「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」の2段階のテストを実施する
(2)これらは年間複数回実施する
(3)これらは1点刻みではなく段階別の結果を出すようにする
(4)外部検定試験の活用も検討する
(5)コンピュータを使用した試験実施も視野に入れる
●個別の大学入学者選抜について
面接、論文、高等学校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動、大学入学後の学修計画案を評価するなど、多様な方法による入学者選抜を実施し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。推薦・AO入試に関しては「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」の利用を示唆。
青写真を忠実に実現した結果の混乱
この教育再生実行会議の青写真を忠実に実現した結果、現在の混乱を招いてしまっているのだ。個別の大学入学者選抜については、2020年度には大きな動きはないので、特にセンター試験の制度改革について具体的に見ていこう。
(1)のセンター試験を基礎と発展の2段階に分けることについては、その発展レベルこそが、現在「大学入学共通テスト」と呼ばれているテストである。基礎レベルについては「高校生のための学びの基礎診断」と呼ばれている。
大きな混乱を招いている英語民間試験は、大学入学共通テストの一環として導入されるものであり、2024年度からは大学入学共通テストの「英語」という受験科目はなくなり、民間試験に完全移行する方針になっている。
経済的な負担、地域による受験機会の不平等、複数の試験を同一指標において使用することの限界などの問題が指摘されているにもかかわらず、文部科学省が英語民間試験の導入にこだわる理由の少なくとも1つは、これを導入することで、センター試験の制度改革として掲げられた上記(2)~(5)のすべてをクリアできるからだ。
(2)の複数回実施は、英語民間試験を2回まで受けられるという形で実現する。(3)の1点刻みではなく段階別の結果を出すというのは「英検2級」というような形で実現する。(4)の外部検定試験の活用はまさにそのものが実現する。(5)コンピューターを使用した試験は、英検のスピーキングのテストなどで一部実現する。
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