19/09/02 09:47:32.97 0+vtHkFo0.net
>>885
われわれはかすり傷も負いたくないという時代に生きているので、
そのかすり傷も負いたくないという時代と世論を逆用した金嬉老は、
実にあっぱれな役者であった。
そしてこちら側にはかすり傷も負いたくない日本青年が、四人の代表をそこへ送り出していたのである。
泰平無事が続くと、われわれはすぐ戦乱の思い出を忘れてしまい、非常の事態のときに男が
どうあるべきかということを忘れてしまう。金嬉老事件は小さな地方的な事件であるが、
日本もいつかあのような事件の非常に拡大された形で、われわれ全部が金嬉老の人質と同じ身の上に
なるかもしれないのである。
三島由紀夫 昭和44年