19/07/12 15:58:12.08 Q/UpGB880.net
田中徳祐 著『我ら降伏せず』
「米軍は虐待しません。命が大切です。早く出てきてください」
投降を勧める放送は再三くり返された。我々はその放送を頭っから否定した。
「そんな甘い手に我々がのると思うか」放送を耳にすればするほど、
強い敵愾心が湧いてきた。
投降呼びかけの放送とは裏腹に、米軍は人道上許しがたい残虐な行為を次々と展開しだした。
我々は、バナデルの飛行場を見おろせる洞窟に潜んでいた。
距離にして1000米くらい先に、上陸してすぐの3月20日から作業をはじめ
完成させた滑走路が横たわっていた。
しかしいまは米軍の砲爆撃で無惨な姿をさらけだしている。
そこへ、三方から追いまくられた数百の住民が逃げ込み、捕われの身となった。
幼い子供と老人が一組にされ、滑走路の奥へ追いやられた。
婦女子が全員、素っ裸にされた。そして、無理やりトラックに積み込まれた。
積み終ったトラックから走り出した。
婦女子全員が、トラックの上から「殺して!」「殺して!」と絶叫している。
その声がマッピ山にこだましてはねかえってくる。
やがて、次のトラックも、次のトラックも走り出した。
絶叫する彼女たちの声はやがて遠ざかつていった。
‥‥なんたることをするのだ!
小銃だけではどうすることもできない。
もし、一発でも発砲すれば敵に洞窟の場所を知らせることになる。
この悲劇をただ見守るより仕方ない。
(この婦女子はその後、1人として生還しなかった)