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シングルマザー残高1万円「必死」 幸福県福井で訴え「生きる保証を」
通帳の預金残高は1万円ちょっと。走行距離12万キロの軽自動車の車検の支払いは、ローンを組むしかない。小学生と園児の子を持つ福井県のシングルマザー、30代の繁子さん=仮名=は「一日一日を必死に生きている。先を考えると不安しかない」と話す。
古いアパートで3人暮らし。一つの布団で3人が川の字で寝ている。ケーブルテレビをひくお金はなく、民放は2局しか映らない。
子どものことで仕事を休むことがある繁子さんは、正社員になれず、派遣社員として勤務。小学校の給食費は、指定の口座から引き落とされるが、残金が足りず、学校側から封筒で催促がくる。
「保育園の無償化もいいけど、お金がかさむ小学校こそ完全に無料にしてほしい」。成長すれば、体操服だって新調しなければならない。
今年のゴールデンウイークは10連休。「迷惑。託児所に預けて働いても、差し引きでお金は減る」。折り合いの悪い実家は頼れず、家計の窮状は誰も知らない。
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10年前に調停離婚した、福井県の明美さん(41)=仮名=は、中学1年生の息子と実家暮らし。約3年前から、正社員として勤務している。
18歳まで支払われるはずの元夫からの養育費振り込みは1年前に途絶えた。「実の父親の責任って何だろう。逃げ得のよう」。でも、元夫とはかかわりたくない。
「結婚は幸せの形のように言われるが、そうでない現実もある。子を持つ責任をしっかり教える場が、教育の中にあってもいい」
結婚後に知り合った人たちは、離婚を機に全員離れていった。残ったのは昔からの友達だけ。収入は20代から右肩下がり。「人生、こんなに転げ落ちるのか」。離婚によって何もかも失った気がした。
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明美さんは知り合いの高齢女性に、離婚した過去を打ち明けたことがある。女性は「父(てて)なし子にして…」と、距離を置くようになった。子どもが保育園に通っているときは、ほかの母親たちの目が気になり、迎えに行くのがつらくなると、母親に頼んだ。
小学校の運動会では、父子で出場する競技があった。配慮のない競技にがくぜんとし、息子からは「僕だけお母さんなのは嫌だ。恥ずかしい」と言われた。
「福井は3世代同居で若夫婦が稼いで、祖父母が孫の面倒をみる、という形が当たり前の世界」と明美さん。幸福度日本一という内容の新聞記事を見ると「自分は少数派だということを思い知らされて」つらくなる。
周囲からは再婚を勧められることも多い。しかし、多くのシングルマザーは、子どもへの虐待を心配して踏み切れないと口にする。
シングルマザーらを支援する団体「フルード」(福井市)の木村真佐枝代表(46)は「ひとり親にも生きる権利は認められている。でも安心して生きる保証は与えられていない。どんな家族の形であっても、明るく生きていける福井であってほしい」と願う。
2019年4月5日 午後5時10分
福井新聞
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