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昭和天皇とキリスト教 実録公開で関心高まる
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昭和天皇とキリスト教の関わりの始まりと考えられるのは、天皇の皇太子時代。
摂政になる直前の1921年、半年かけて欧州各国を訪問したが、その最後にイタリアで
ローマ教皇ベネディクト15世と会った。この時の出会いが、若き昭和天皇に強い印象を
与えたようで、第二次世界大戦開戦直後の41年11月2日、天皇はローマ教皇を通じた
時局収拾の検討を東条英機首相に提案したという。開戦直前から、戦争終結の手段を考え、
その際に頼みとなりうるのがカトリック教会であると考えを巡らせていたということだろうか。
敗戦後の占領期、天皇はさらにカトリックに接近。戦前からキリスト教徒と親密にしてい
た香淳皇后の影響もあってか、女性牧師の植村環(たまき)から皇后とともに聖書の講義を
受けるなどして、キリスト教に親しんだ。外国人神父などとも頻繁に会い、側近に各地域の
キリスト教事情も調べさせていたという。実際、49年に九州を訪れたときには、長崎県や
大分県のカトリック施設を訪れ、予定よりも30分長く留まったり、予定にない聖堂の視察を
したりしたことが、実録から確認できる。
一連の行動を受けてか、当時は天皇がキリスト教に改宗するといううわさが広まるほど
だったが、外国人記者の、キリスト教に帰依するかという質問に対して、「外来宗教につ
いては敬意を払っているが、自分は自分自身の宗教を体していった方が良いと思う」と答
え、うわさを打ち消した。
原氏は、天皇がカトリックに接近した背景には、戦中の神道に対する反省や、戦後日本国内の
不安定な情勢、米国への対抗策といった、戦争責任と米国からの相対的自立という大きな
2つの課題があったのではないかと分析している。だが、非常に興味深いのは、どのような
歴史的、政治的背景があったにせよ、昭和天皇がカトリックへ改宗する道を探っていたと原氏
が推測している点だ。