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『燃えよ剣』 司馬遼太郎
「侍に怨霊なし」
と古来いわれている。
歳三もそう信じてきた。
むかし壬生にいたころ、新徳寺の墓地に切腹した隊士の亡霊が出る、と住職が屯営に駈けこんできたことがある。
歳三はおどろかなかった。
「その者、侍の性根がないにちがいない。現世に怨霊を残すほど腐れはてた未練者なら、わしが斬って捨ててあらためてあの世へ送ってやろう」
と、歳三は墓地へゆき、剣を撫して終夜、亡霊の出現を待った。
ついに出なかった。