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2016.9.6 01:00
【外交・安保取材の現場から】悪さを繰り返す隣人が突然それをやめると、よいことをしたかのように錯覚するが…そう、ドヤ顔のあの国です
悪さを繰り返す隣人が、突然それをやめた。それだけで何か良いことでもされたかのような
錯覚を覚えそうだが、隣人に与えるべきは称賛ではなく、悪さへの批判や叱責であり、
二度と繰り返さないための戒めだ。もし隣人が悪さをやめたことへの見返りを求めてきても、
取り合う必要などまったくない。子どもでもわかる道理だ。願わくば、そんな厚顔無恥な
隣人とは出合いたくないものだが…。
もちろん中国のことだ。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域で活動する中国公船の数は
ここのところ減少し、領海侵入は8月21日を最後にゼロになった。領海の外側にある接続水域で
活動する中国公船も、一時期に比べ鳴りを潜めている。
岸田文雄外相は8月末に来日した中国の王毅外相に、東シナ海での挑発行動を自制するよう
強く求めた。これに対し王氏は「事態は既に正常に戻っている」と記者団に言い放っている。
まるで日本が抱える問題を中国が解消してやったかのような“ドヤ顔”ぶりだが、そもそも誰が
火だねをまいたのかにはまるで興味がないようだ。
こうした態度は日本に対してだけでなく、国際社会の場でも披露されている。
国連安全保障理事会は8月26日夜、中国も同意の下で、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル
(SLBM)などの発射を「強く非難する」とした報道声明を発表した。7月以降、北朝鮮が弾道
ミサイルを発射する度に日米両国などは非難声明の発出を検討したが、中国が難色を示したため
取りまとめられない状態が続いていた。中国はその方針を一転させ、声明を受け入れた形だ。
声明に同意しただけでなく、中国の肝いりで「安保理は朝鮮半島とそれを超えた地域で緊張緩和に
向けて努力する重要性を強調した」との一文も盛り込まれた。国連安保理の常任理事を務める
大国としての責務を果たし、国際社会をリードしていると言わんばかりのアピールぶりだ。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は明らかな国連決議違反で、国際社会の脅威だ。岸田氏は米国の
ケリー国務長官と電話会談し、非難声明が出されたことを歓迎した。ただ、非難声明は本来、
発射後ただちに発出されるのが当然で、2カ月近くも遅れたことが異常といえる。
しかも中国が非難声明に難色を示していた理由は、米国による在韓米軍への最新鋭地上配備型
迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備決定に不快感を示す意図からで、
身勝手というほかない。非難声明の発出が遅れた責任を追及こそすれ、評価にはまったく値しない。
中国が強硬路線から軟化姿勢に転じたのは、中国・杭州で4、5両日に開かれた20カ国・地域
(G20)首脳会議で、中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題の争点化を避けたいという思惑が
あったからだ。実際、中国は国際社会への協調路線にシフトする見返りに、G20で南シナ海問題を
取り上げないよう日本を含む参加各国に水面下で働きかけていた。中国がホストをつとめるG20は
「今年の中国外交のハイライト」(外務省幹部)といえる。その晴れ舞台が南シナ海問題で染まれば、
習近平政権の沽券(こけん)に関わるというわけだ。
これまた勝手な動機だ。無理無体をごり押しし、それを少し引っ込めれば恩恵にありつける。
こんなことがまかり通れば、国際社会の秩序は保てない。しかも中国はそれを「意図的」(外務省幹部)
に行っている可能性が高い。中国の策略に安易に乗るべきではない。
G20に出席した安倍晋三首相は5日、各国首脳が出席する全体会議の場で、南シナ海問題を
念頭に「海洋における航行・上空飛行の自由の確保と、法の支配の徹底を再確認したい」と呼びかけた。
その後の習氏との日中首脳会談では、東シナ海での挑発行為に懸念を示し、自制を要求。
南シナ海問題もとりあげ、「法の支配」の重要性を強く訴えた。新華社電によると、習氏は
「日本は言動に注意するべきだ」と反論したという。日本は本当にやっかいな隣人を持った。
(政治部 石鍋圭)
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