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原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)
作者: 有馬哲夫
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2008/02
同じ著者の『日本テレビとCIA』(新潮社、2006年)の続編に当たるが、最初から新書のために書き下ろされたこの本は前作ほど硬派の作りにはなっておらず、速く読める。
参照文献も、文献番号を付して厳密に参照先を示していた前作とは異なり、巻末にまとめて「本書のソース」として示している。ハードカバーと新書で書き分けたということだろう。
以前、『日本テレビとCIA』について書いた時*1にも参照した、本書についてのノビー(池田信夫)の書評*2を再び掲げておこう。
本書では原発が中心になっているが、著者の前著『日本テレビとCIA』とあわせて読むと、冷戦の中でメディアとエネルギーを最大限に政治利用した正力松太郎という怪物が、現在の日本にも大きな影響を残していることがわかる(これは『電波利権』にも書いた)。
正力は暗号名「ポダム」というCIAのエージェントで、米軍のマイクロ回線を全国に張りめぐらし、それを使って通信・放送を支配下に収めるという恐るべき構想を進めていた。
この「正力構想」はGHQに後押しされ、テレビの方式はアメリカと同じNTSCになったが、彼が通信まで支配することには電電公社が強く反対し、吉田茂がそれをバックアップしたため、正力構想は挫折した。しかし、そのなごりは「日本テレビ放送網」という社名に残っている。
そしてGHQが去ってからも、正力はCIAの巨額の資金援助によって「反共の砦」として読売新聞=日本テレビを築いた。同じくCIAのエージェントだった岸信介とあわせて、自民党の長期政権はCIAの工作資金で支えられていたわけだ。
正力が原子力に力を入れたのは、アメリカの核の傘に入るとともに、憲法を改正して再軍備を進めるためで、最終的には核武装まで想定していたという。
しかしアメリカは、旧敵国に核兵器をもたせる気はなく、正力はCIAと衝突してアメリカに捨てられた。しかし彼の路線は、現在の渡辺恒雄氏の改憲論まで受け継がれている。
こうした巨大な政治力を使えば、電波利用料で1000倍の利益を上げるなんて訳もない。
(『池田信夫blog(旧館)』 2008年2月26日付より)
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