15/12/18 10:54:41.21
>>1より
例えば、「イスラム国」問題。トルコは「イスラム国」の存続を望んでますが、イラン、サウジ、エジプト、
イスラエルは抹殺しないとダメだと考えている。一方、イランの核開発に関しては、トルコ、サウジ、イスラエル、
エジプトはとんでもないと拒絶して、イランだけ孤立しています。
パレスチナ問題だとイスラエルだけが孤立するし、シリアのアサド政権に関しては、イランとイスラエルは復権させたいが、
トルコは排除したい、サウジとエジプトはどうでもいい…。このようにいろんな問題で敵味方が入り乱れる組み合わせになっており、
動きが複雑なので、中東情勢は分析が困難になっているんです。
鈴木 困難ですが、佐藤さん的にはどう分析しますか?
佐藤 シリアはアサド政権と「イスラム国」とアルカイダ系がとりあえずバランスを保ってますが、「イスラム国」が崩れて
分解が進むと、さらにバラバラになり、最後はマフィアと国際資本によって支配されるようになるかもしれないですね。
イラクは、アメリカがフセインを倒して民主主義にしようとしたら、人口の多いシーア派の国家になった。
そしてシーア派はスンニ派をいじめ抜き、それが「イスラム国」が出てくる土壌になった。
もはやシリアもイラクも国家としての統合を回復することはないでしょう。
そんな中で、アメリカは中東でのパートナーをサウジからイランに変えようとしている。
これまでのようにイランを敵視するどころか、
むしろ中東に対してはイランを通して間接的に影響力を行使していこうと思っている。
そうなると、一番怒るのがイスラエルです。これも日本ではほとんど報道されていませんが、11月20日にアメリカは、
イスラエルに秘密情報を流していた罪で1985年に逮捕した元米海軍大尉で、情報将校だったジョナサン・ポラードを
釈放しました。ポラードに関してはイスラエルが釈放を何度も要求してたのにアメリカが頑として認めず終身刑にしていたんです。
それをここにきて釈放したのは、イランに対して譲歩したいから、イスラエルからの無理筋の話でも丸のみにして許しを乞うている、
一種の土下座外交ということです。裏返して言うと、そこまでしてアメリカはイランと付き合いたいわけです。
では、中東で今、どこの情勢を一番注視すればいいか?
それは、ヨルダンです。今、ヨルダンは国家統合が危うくなっていて、いつ内乱が起こってもおかしくない。
アメリカとイスラエルはそのことをよくわかっているから全面的な支援をヨルダンにしています。
ヨルダンの防空は、イスラエルとヨルダンが共同で行なっている。
事実上、イスラエルがヨルダンの国防を担当している状況なんです。
だから今、中東はすごく怖い状態になっている。空気がパンパンに詰まった破裂寸前の風船です。
そこにアルカイダや「イスラム国」が針を刺して爆発させようとしている。その針を欧米やロシア、
イランが寸前で叩き落としている状態ですね。
こんな状況でサウジの国王暗殺とかヨルダンの内乱とか、あるいはエジプトの政権が転覆して
「イスラム国」系が権力を奪取すれば、この風船は爆発します。
すると大混乱に陥って、第5次中東戦争がすぐにヨーロッパ、バルカン半島を巻き込んで第3次世界大戦に近くなりますね。
(取材・文/小峯隆生 撮影/五十嵐和博)