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★日本人にだけ通じる「9条解釈」 - 西原正(平和・安全保障研究所理事長)
内外ニュース2015年10月31日 09:42
■安全保障法制を柔軟に活用せよ
新しい安全保障法制が成立して安倍政権は、これから安全保障上の役割を拡げて、
日本の安全および国際安全保障に役立てたいとしている。
そして政府は、中国の軍事的海洋進出など国際情勢が厳しくなっている今日、
憲法第9条の解釈を修正することによって、いくつかの事態における自衛隊の役割を
拡大したが、同時に自衛隊の役割に対する重要な法的制約もいくつか設けた。
政府は、こうして切れ目のない安全保障法制を作ることができたとしている。
しかしこれらの制約を、国際社会はどう見ているだろうか。とくに同盟国の米国人はどう見ているだろうか。
日本としての独りよがりの憲法解釈に縛られていないだろうか。
■制約し過ぎる集団的自衛権の行使
例えば、自衛権。新しい法制は、日本は個別的自衛権を中核において国の安全を守り、
「存立危機事態」においてのみ集団的自衛権を行使するとしている。
しかし米国人の多くは、自衛隊はなぜ存立危機事態においてのみ集団的自衛権を行使する
(米軍や日本と密接な関係にある他国部隊と肩を並べて武力行使する)のかという疑問を抱く。
日本が国連憲章で認められている集団的自衛権を限定的にしか使用しないで、自国の安全を
確保することができるのかと思うだろう。彼らにとっては、朝鮮半島や台湾海峡、あるいは南シナ海の
緊張は、日本の安全に直接影響を与えるのに、自衛隊が米軍と共に闘わないのは理に合わないと思うであろう。
一般の米国人は、「日本は集団的自衛権を行使できるようになった」ということで、
3要件を伴う限定的な行使だとは理解していない。厳しい3要件を知って、多くの人は、
これでは自衛隊が集団的自衛権を行使できるとは思わないであろう。
そしてその人たちは、日本の存立が危ぶまれるとき、そして国民の生命、財産に深刻な影響を与えるような事態に、
日本が集団的自衛権を行使するとしても、そういう事態が滅多に起きないだろうから、
自衛隊が集団的自衛権を行使することも滅多にないだろうと考える。
■あいまいな存立危機事態と重要影響事態
さらに日本政府は、「日本の存立にとってきわめて危機的な事態であれば肩を並べて戦う
(前述の存立危機事態で集団自衛権の行使が可能)が、それほどの危機事態ではないが、
放置すれば日本の安全に重要な影響を及ぼす事態(重要影響事態)と判断されれば、
自衛隊は『非戦闘地域』で『後方支援』をすることとなる」という。
そして新法制は、自衛隊は「非戦闘地域」で「後方支援」をして食糧、水、燃料、弾薬などの補給、
輸送を行うこととした。
さらに、非戦闘地域に戦闘が及んできて戦闘地域になってきた場合には、
自衛隊は速やかに後方支援活動を中止して、撤退することとした。
しかし、米国人にしてみれば、存立危機事態と重要影響事態という、そんな区別をする必要が分からないであろう。
米国人は、紛争相手国は日本が何らかの形で戦闘に関わっていると判断するならば、日本を攻撃するだろうと考える。
自衛隊が他国の戦闘部隊よりも後方にいることで安全だとは考えない。とくに後方にいて装備が軽ければ、
紛争相手国の部隊にとっては攻撃しやすいと考えるかもしれない。したがって自衛隊にとっては、
かえって危険な状態におかれるかもしれない。
同時に多国籍軍が戦っている相手は、自衛隊が「後方で燃料や食糧、弾薬の補給はするが、
兵器の補給はしない」という法的制約下で任務を遂行しているとは採らないであろう。
相手は、自衛隊はむしろ戦闘に参加すると想定するだろう。
自衛隊は「自分たちは兵器の補給、輸送はしないことになっている」といっても、相手は信じるだろうか。
となると、日本が国内の政治的機微の問題として細かく後方支援の内容を規定しても、ほとんど意味がないことになる。
また、米国その他の国の部隊は、自衛隊が他国の軍隊と肩を並べて武力行使をしないのは「腰抜け」
「臆病者」と取るだろう。そして国際平和のために皆が責任を果たそうとしている時に、日本がそれを拒否するのは、
非協力あるいは集団的自衛権の放棄だと烙印を押すかもしれない。 >>2