15/06/27 18:47:52.92
★南シナ海の埋め立て、合法と非合法の分かれ目は?
フィリピンからのメッセージ(その2)
2015.6.27(土) 松本 太
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)
中国が埋め立てを進める南シナ海・スプラトリー諸島(南沙諸島)の7つの環礁(カルピオ判事のプレゼン資料より)
前回(「フィリピン最高裁判事が中国の主張を一刀両断に」)に引き続き、マニラからの報告を続けます。
今回マニラを訪れたのは、「海洋公共財に関する共通の行動に向けて」
(Towards Common Actions on Maritime Commons)と題して地域の専門家を集めた
ワークショップ(6月15日開催)を、世界平和研究所、フィリピン外務省の外交研究所、
フィリピン大学の海洋問題・海洋法研究所の3者共催で開催することが目的です。
基調講演を引き受けてくれたのは、フィリピンの最高裁判所判事で南シナ海
問題についての権威でもあるアントニオ・カルピオ判事でした。
前回は、南シナ海における中国の埋め立て工事はどこまで進んでいるのか、
国連海洋法条約に照らし合わせると中国の行為はなぜ認められないのかについて、
カルピオ判事の分析を紹介しました。カルピオ判事の主張をさらに紹介していきましょう。
■中国は埋め立て工事の前に沿岸国と調整すべき
最初の法的問題は、中国が7つの礁で埋め立て工事をする際に、
ベトナムやフィリピンなどの沿岸国と協議すら行っていないことです。
カルピオ判事は次のように言います。国連海洋法条約第122条に基づけば、
南シナ海は半閉鎖海なのです。同条は、「『閉鎖海又は半閉鎖海』とは、湾、
海盆又は海であって、二以上の国によって囲まれ、狭い出口によって他の海
若しくは外洋につながっているか又はその全部若しくは大部分が二以上の
沿岸国の領海若しくは排他的経済水域から成るものをいう」としています。
そうなると、「閉鎖海又は半閉鎖海に面した国の間の協力」を謳う第123条に従って、
同一の半閉鎖海に面した国々は、例えば、海洋環境の保護及び保全に関する
自国の権利の行使及び義務の履行について、相互に調整を行う必要があるのです。
しかし、中国はこのような点について沿岸国たるベトナムやフィリピンに通報もせず、
協議も協力も行っていないのです。この点において、国際社会が中国が埋め立て
工事という一方的な現状変更を行っていることを非難しているわけです。
■沿岸国であるベトナムやフィリピンの工事は合法
中国は、南シナ海でベトナムやフィリピンも同様の工事を行っているのだから、
中国も埋め立て工事をやっているのだという説明を行っています。
しかし、カルピオ判事は、このような中国の見方も法に基づいて一刀両断します。
すなわち、南シナ海においてベトナムやフィリピンがこれまでに行った工事は、
中国とは異なって合法的であることもカルピオ判事から指摘されたのです。
そもそもベトナムやフィリピンは、中国のように南シナ海の「LTE」
(Low Tide Elevation:低潮高地)に対して主権を主張しているわけではありません。
また、ベトナムとフィリピンは、常に海面上にある「島」においてしか工事を行って
いないのです。従って、これは国連海洋法条約の上で合法的な行為となると言うのです。
なぜ合法なのかというと、同条約第60条および第80条によれば、沿岸国はEEZおよび
大陸棚において、人工島、施設および構築物の建設、運用および利用を許可および
規制する排他的権利を有しているからです。そして、ベトナムやフィリピンは、
現在、両国が実効支配している「島」の沿岸国なのです。 >>2へ続く
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)
関連スレ
【国際】フィリピン最高裁判事、中国の主張を一刀両断に [06/26]
スレリンク(newsplus板)
2:◆CHURa/Os2M@ちゅら猫φ ★
15/06/27 18:48:18.13
>>1より
また、台湾でも2014年9月に馬英九総統が、台湾はそもそも南シナ海の「島」に対して
しか主権を主張しておらず、その他のLTEに対しては主権主張を行っていない旨を
述べたことも、カルピオ判事から紹介されました。同判事は、これは中国政府の
「九段線」の主張や歴史的主張に対する痛烈な打撃となったと考えています
(注:「九段線」とは中国が南シナ海の領有を主張するために引いている海上の境界線)。
実際、現在の中国共産党が支配する中国政府が成立する以前に正当な中華民国政府
であった台湾の国民党政府のトップ、それも国際法に精通する馬総統が、
国連海洋法条約に基づく解釈を提示していることは忘れてはならないでしょう。
■中国は公海において人工島を造成することができるのか
それでは、中国は「公海の自由」の原則を持ち出して、人工島を公海に造ることが
できるのでしょうか。カルピオ判事は、これも法的にできないことを明らかにしてくれました。
確かに、国連海洋法条約第87条1は、「公海は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、
すべての国に開放される。公海の自由は、この条約および国際法の他の規則に定める
条件に従って行使される」と記し、公海の自由に含まれるものとして、航行の自由や
上空飛行の自由などに加えて、その「d.」において、「国際法によって認められる
人工島その他の施設を建設する自由。ただし、第6部の規定の適用が妨げられる
ものではない」と明記されています。
第6部は第80条も含まれますから、この「87条1 d.」の規定が適用されるのは、
沿岸国がEEZを越えて大陸棚を主張することができない場合に限定されるのです。
すなわち、沿岸国であるフィリピンが200海里も越える延長大陸棚を有する場合、
その大陸棚に位置している環礁で、中国が人工島を作ることは、
公海上であっても問題となるということです。
また、人工島が公海に建設されるとしても、それは平和的な目的(非軍事)に
限ったものであるべきなのです。なぜなら、第88条において、「公海は平和的
目的のために利用されるものとする」と記されているからです。
■近代国際海洋法の基礎への中国の挑戦
カルピオ判事は、講演の最後において中国が国際社会に突きつけている本質的な
問題を提示してくれました。それは、海洋の自由という近代国際法の原則に中国が
挑戦しているという点です。まさに、フーゴー・グロチウスの「自由海論」対
ジョン・セルドンの「閉鎖海論」として知られる海洋の原則をめぐる問題そのものなのです。
グロチウスは1609年に「自由海論」(Mare Liberum)を著しました。
これは、東インドに対するポルトガルの所有権を否定し、母国オランダの立場を
擁護する観点から海洋の自由を論じ、すべての国が東インドとの通商に参加する
権利を有することを主張したのです。
一方、イギリスのジョン・セルデンは、1635年に「閉鎖海論」(Mare Clausum)を著し、
グロチウスの自由海論に対抗しました。当時のイギリスは近海の漁業支配の独占を
狙っていたことから、セルデンはイギリスによる近海漁業の支配の論拠として
海洋が領有可能であることを主張したのです。
しかし、海洋の自由を訴えたグロチウスの「自由海論」が、結局、その後の近代的な
海洋法秩序形成を促し、現代の国連海洋法条約を根拠づけることになりました。
この点についてカルピオ判事は次のように述べ、中国の「九段線」の主張が
近代の海洋国際法に突きつけている挑戦の意味を明らかにしました。
「今日、国家は海洋の全体か、そのほとんどに主権を及ぼすことができるとする
ジョン・セルデンの議論を、中国は改めて惹起しています。
この問題が、フィリピンが国際仲裁裁判所に提訴した問題の核心にあります。
>>3へ
3:◆CHURa/Os2M@ちゅら猫φ ★
15/06/27 18:48:25.00
>>2より
もし、中国の九段線の主張が許容されるならば、海洋法のグロチウス的基礎に
対する直接的な攻撃になります。すなわち、公海における上空飛行の自由、
航空の自由、沿岸国のEEZに対する権利、人類の共同の財産といったすでに
確立されている原則の全てが危機に瀕するのです。
国際社会は、一国家が海洋法を書き換え、ほぼ全体の海に対する疑いを得ない
主権を行使することを可能にし、公海をその主権の管轄下におき、沿岸国のEEZの
相当の領域を奪取することを、はたして許容できるでしょうか。そのいずれもが、
国連海洋法条約における国際社会の法的な海洋上の権利であるにもかかわらず」
すなわち、中国による南シナ海の埋め立て工事の規模や速度だけが問題なのではなく、
埋め立て工事を含めて九段線の主張そのものが国際法に照らして不法であるばかりか、
近代の国際法の実質的法源への挑戦であるという単純な真実なのです。 (了)
4:名無しさん@13周年
15/06/27 19:18:41.02 Aao9YcBf8
中国共産党は常に正しいってことじゃないの?