15/05/06 13:43:36.01
>>1より
■ペースも規模も並外れた建設工事
領有権を主張するすべての国々について、非難の余地はある。島の建設は昔から、領有権を主張する
戦術としてどの国も使ってきた。だが、中国の進めている工事は、ペースも規模も並外れている。
米軍事情報企業IHSジェーンズが4月に公開した衛星画像を見ると、中国が今年に入ってから、
軍事目的で使用可能な施設の建設を南シナ海で急ピッチで進めていることが分かる。
例えば、ファイアリークロス礁では、完成すれば長さ3キロに達する滑走路の建設が進んでいる。
ファイアリークロス礁はいまや、南沙諸島(スプラトリー諸島)にもともとある最大の島の3倍の大きさになっている。
数週間前にIHSジェーンズと米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が公開した衛星画像は、
同じく南沙諸島にあるミスチーフ礁でも同様の工事が進む様子を捉えている。
こうした中国の行動は、それ以外の外交政策における最近の傾向と矛盾している点でも目を引く。
例えば、中国は昨年来、別の領海問題で対立している日本との関係改善に努めている。
また、2国間の長い国境を巡って意見の食い違いがあるインドに関しても、より親密な関係を築く
取り組みの一環として、5月に訪中するナレンドラ・モディ首相を歓迎する予定だ。
中国当局に言わせれば、南シナ海での中国の行動は、これまで他国が取ってきた行動に
追いつこうとしているだけだという。
だが、東南アジア諸国の政府関係者は、中国の建設行為について、2002年にASEANと中国との間で成立した、
この海域では「自制」を働かせるとの合意の精神に反すると不満を表明している。
アナリストの多くは、こうした中国の行動を、これまで米国が支配していた地域において
自国の力を押し出す余地を広げる努力の一環と捉えている。
■米国のアジアへのピボットが現実になる?
中国による埋め立て工事は、これまで南シナ海で見せてきた強引な行動の延長線上にある。
2011年には、南沙諸島付近で、中国の巡視船がベトナムとフィリピンの石油探査船の活動を妨害した。
2012年には、領有権を巡りフィリピンとにらみ合いとなっていたスカボロー礁を占拠した。
2014年には、ベトナムが領有権を主張する海域に中国の国有企業が海上石油掘削装置を設置し、
ベトナムの各都市で暴力を伴う反中デモを引き起こした。
結局、石油掘削装置は数カ月後に撤収された。
2013年には、南シナ海における中国の領有権の主張には根拠がないとして、フィリピンが国連条約に
基づく仲裁裁判を起こしたが、これに対して中国は怒りをあらわにし、審理への協力を拒んでいる。
中国の一部の専門家でさえ、中国敗訴の可能性が高いことを認めている。
そうなれば、中国はいっそう苛立ちを募らせるだろう。
だが、中国はそうした結果を受け入れる準備を進めてきたようだ。その結果には、米国のいわゆる
アジアへの「ピボット(旋回)」(現在は「リバランス(再均衡)」と呼ばれている)―これは
この地域の米国の同盟国にも、しばしば絵空事のようなものと見なされている―がより現実的な
ものになるリスクも含まれている。
フィリピンと米国は昨年、防衛協力強化協定を締結した(両国は最近、15年ぶりとなる大規模な合同軍事演習を実施した)。
安倍首相のワシントン訪問の際には、米国が「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の改定に合意し、
より幅広い軍事協力への道が開かれた。
また米国は、かつて(米中双方にとって)敵国だったベトナムとの間でも、軍事的な結びつきを強めている。
政府の統制下にある中国メディアは、露骨な言葉を使った長大な論説で忠実に応酬し、
ネット上の興奮しやすい中国のナショナリストたちの支持を集めているようだ。 >>3へ
3:◆CHURa/Os2M@ちゅら猫φ ★
15/05/06 13:43:42.69
>>2より
■容易ではない目標
だが、バージニア州の新シンクタンクは、国外で中国の主張の説得力を高める取り組みの中で
設立されたものだ。昨年9月には、中国東部にある南京大学の中国南シナ海研究協同革新センターに、
博士課程の学生の第1陣が入学した。
彼らに期待されている役割の1つは、恐らく、史料を徹底的に調べ、中国の領有権(その主張は、
中国共産党が権力を握る直前の1940年代にさかのぼる)を裏づけられそうな文書を見つけ出すことだろう。
ワシントンで先ごろ開かれた会議に出席した上海の復旦大学の沈丁立氏によれば、中国政府はとりわけ、
南シナ海に関する研究への投資に熱心だという。その狙いは、中国人が「自分たちの意見を効果的に主張し、
人々に耳を傾けてもらうだけでなく、正しく理解してもらえるように」することにあると、沈氏は述べている。
それは簡単なことではないだろう。中国の学術界が直面する難問の1つに、秘密主義的な中国軍の行動がある
(文民の指導者でさえ、軍部の行動のすべてを常に把握できてはいないようだ)。南シナ海での最近の
埋め立て工事が明るみに出たのは、ひとえに中国以外の衛星のおかげだ。
バージニア州の新シンクタンクを率いる洪農氏は、南沙諸島の岩礁で急速に工事が進んでいることを示す
最近の画像に「驚かされた」と認めている(洪氏がその画像を最初に見たのは、CSISのウェブサイト上だった)。
洪氏はさらに、中国の近隣諸国の懸念は理解できると語り、中国は対話と「透明性」の向上により
他国を安心させるべきだ、とまで述べている。
中国が伝えようとしているのは、領有権を巡る主張の(中国が言うところの)正しさという
単純なものにとどまらない、もっと大局的なメッセージだ。
ニューサウスウェールズ大学のカーライル・セイヤー氏によれば、中国の戦略は、ソフトパワーなどの
手段を通じて近隣諸国を「徐々に」説得し、東アジアの秩序において、中国が主要な役割を果たして
いるという考えを認めさせることにあるという。
沈氏も基本的にそれに同意する。中国の目標は、「全員が勝つにしても、中国が最も大きな勝ちを収める」
ことだと同氏は述べている。(了)