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訪米中の安倍晋三首相は２９日（日本時間３０日未明）、米議会での演説で、交渉が大詰めを迎える
環太平洋パートナーシップ協定（ＴＰＰ）について、「日米間の交渉は出口がすぐそこに見えている。
米国と日本のリーダーシップでＴＰＰを一緒に成し遂げましょう」と呼びかけた。ＴＰＰの重要性を強調することで、
交渉合意に不可欠な大統領貿易促進権限（ＴＰＡ）法案の早期成立を求めた形だ。
「日米がリードし、いかなる国の思惑にも左右されないフェア（公正）で、ダイナミックで持続可能な市場を作り上げなければならない」
「ＴＰＰには経済的利益を超えた長期的な安全保障上の意義がある」。安倍首相は台頭する中国を念頭に、
ＴＰＰ合意の重要性をこう訴えた。また、「太平洋の市場では、過酷な労働や環境への負荷も見逃すわけにはいかない」と述べ、
米議員らの関心の高いテーマを取り上げることでＴＰＡ法案への理解を求めた。
法案が成立すれば、議会が政府間の合意を修正できなくなり、交渉参加国は合意に向かうとみられている。
オバマ米大統領も２８日の首脳会談後の記者会見で法案成立が容易でないことを認めながらも、
「最終的には法案が可決されると自信を持っている」と述べた。
法案を後押ししそうなのが、中国が設立を主導するアジアインフラ投資銀行（ＡＩＩＢ）が
５７カ国もの創設メンバーを集め、議会内で強くなっている中国への警戒感だ。ＴＰＰ推進派のポール・ライアン下院歳入委員長（共和党）は
２８日、「日米が手を組めば、中国の弱いものいじめや、アジア太平洋地域の主導権を握ろうとする動きに対抗できる」と
の声明を発表。賛成票を増やそうと、中国への対抗心をあおっている。
ただ、法案が上下両院の本会議で順調に審議されるかはまだ見通せない。
特に、下院民主党は反対運動を展開する労働組合の影響を受けやすいとされ、可決に必要な賛成票を集められるか
不透明な状況だ。貿易交渉や米議会に詳しいヤイター元米通商代表は「安倍首相の演説がどれだけ素晴らしくても、
議会の賛否には影響を与えられそうもない」と議会対策の難しさを語る。ＴＰＡ法案成立が予断を許さない中で、
ＴＰＰ交渉は最終局面を迎えようとしている。【ワシントン清水憲司】