【社会】「残業代ゼロ」法案=過労死法案の誤解を解く 八代尚宏 国際基督教大学客員教授・昭和女子大学特命教授at NEWSPLUS
【社会】「残業代ゼロ」法案=過労死法案の誤解を解く 八代尚宏 国際基督教大学客員教授・昭和女子大学特命教授 - 暇つぶし2ch2:◆CHURa/Os2M@ちゅら猫φ ★
15/02/17 13:25:18.98
>>1より

・現行の裁量労働制ではなぜ不十分なのか

現行法でも、特定の専門的な職種については、実際に働いた労働時間の長さにかかわらず賃金が支払われる
裁量労働制が適用されている。新たな制度を作らなくとも、この適用対象となる職種を増やせば、
多様な働き方が可能となるとの批判もある。これに対しては、現行の裁量労働制が欧米の仕組みと
比べて極めて中途半端であり、業務の始業時間にかかわらず、少しでも深夜や休日に労働時間が及ぶと、
とたんに「深夜・休日労働は疲労度が高い」として、割増残業率の適用が義務付けられる硬直的な
仕組みのためである。これは週40時間を超えるかどうかだけで判断する米国の残業時間規制の仕組み
とも異なっている。

大学や研究機関の調査研究業務だけでなく、外国との時差に対応してもっぱら深夜に働く仕事や、
情報機器等のメンティナンス作業のため、一般の社員が帰宅した後で仕事を始めるために、
もっぱら深夜・休日に働かなければならない職種も増えている。そうした現状を踏まえれば、
特定の職種についての割増賃金規制を除外にする、完全な裁量労働制が必要とされる。
これは、いわば「部下のいない管理職」的な働き方の専門職のイメージに近い。

・長時間労働でダラダラ…そんな社員の報酬は抑制される

この労働時間法制の改革は、仕事の現場で実際に行われている働き方に、時代遅れの法制度を合わせる
もので、多くの労働者にとってより働きやすい就労環境を目指すものである。もっとも、専門職の内でも、
短時間で効率的に働く社員の報酬が増える半面、長時間労働で仕事の質の低さを補ってきた社員の報酬が
抑制される可能性は否定できない。

2000年代はじめ、電機労連が会社との交渉で作り上げた新裁量労働制は、慢性的な長時間労働のプログラマー
やシステム・エンジニアの労働時間短縮を目指したものであった。時間が空いたときには少しでも長く
休むことが容易になるように、労働時間と切り離された定額の報酬である「裁量手当」を定めた。
これは管理職手当に相当するもので、この具体的な水準は、個々の会社によって異なるものの、
例えば本給・調整額の3割というものもあった。このように、現行の残業割増手当がなくなると、
必ず年収が減るというわけではない。

・「労働市場の流動化」は労働者の保護につながる

現行の残業時間に比例した手当を定めた規制を変えることは、残業代をまともに支払わないブラック
企業を利するのみという批判もある。しかし、現行の法律自体を守っていないブラック企業を引き合いに、
まともな大部分の企業を対象とした改革案を批判することは的外れである。労働法を守らない企業に
対しては、犯罪者を取り締まる警察と同じ厳格な対応が必要である。

労働基準監督官が人手不足で十分に取り締まれないならば、例えば、定期検査に民間事業者を活用し、
そこで検査を拒否したり、違反が見つかった企業のみに、後で監督官が立ち入る等の役割分担の
仕組みを設ければ良い。これは駐車違反の取締り業務を民間事業者に委ね、警察官は公務員で
なければできない業務に専念することと同じである。

しかし、いくら労働基準監督署の機能を強化しても、法を守らない事業者はあとを絶たない。
労働者を保護するための最善の手段は、労働者にとって「労働条件の悪い企業を辞める権利」を
確保することである。日本では、「労働市場の流動化」という概念に対しては、「企業のクビ切りの
自由度を高める」という否定的なイメージが強いが、それは労働者にとっても「労働条件の悪い
企業からの脱出」を容易にすることでもある。すでに労働力人口が持続的に減少する時代に突入
している現在、少しでも景気が良くなると、途端に低賃金の仕事には労働者が集まらず、
事業所の閉鎖に追い込まれる状況となっている。

少子高齢化の進展は、労働者にとっては中長期的には「売り手市場」を意味している。
労働時間の短縮化を含む労働者の保護のためには、「賃金や労働条件の悪い企業を辞められる」
選択肢を増やすことが基本となる。労働時間の改革は、それ自体だけでなく、労働市場の流動化を
促す他の規制改革と結び付くことで、大きな相乗効果をもつと言える。(了)


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