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★「中学生でもわかる」 初代規制委員長が語る原子力の「虚構」
東京電力福島第1原発事故の発生から、11日で15年を迎える。
「世界一厳しい」とされる原子力規制委員会の審査をクリアした原発の再稼働が進み、
原子力への回帰が強まっているかに見える、だが、規制委の初代委員長を務めた田中俊一さん(81)は
「信頼が回復したとは思っていない」と語る。なぜだろうか。
「規制の問題じゃないんです」
茨城県内の自宅で取材に応じた田中さんは、何度もこう繰り返した。
その意味を明らかにする前に、規制委が発足した経緯をおさらいしたい。
福島事故で、原子力に対する信頼は地に落ちた。
その背景に、本来独立であるべき規制機関が、電力会社などの推進側に取り込まれる
「規制の虜(とりこ)」と呼ばれる状況があったと指摘された。
政府はこれを教訓に、高い独立性と透明性を持つ規制委を2012年に設立した。
地震や津波などの自然災害や過酷事故への対策を強化した「新規制基準」を作り、
これをクリアしなければ再稼働できないようにした。
だが規制が強化されても、原発を巡る不祥事は続いている。
東電は、審査をクリアした柏崎刈羽原発(新潟県)で、
安全上重要なテロ対策の不備を起こし、再稼働への手続きが長期間止まった。
中部電力浜岡原発(静岡県)では、審査の根幹になる地震動のデータを不正に操作していたことが発覚した。
田中さんは、規制の限界を指摘する。
「規制は100%ではないと何度も言ってきた。箸の上げ下げまで見ることはできない。
会社の体質までは変えられないですよ。それは経営の問題です」
田中さんは在任中、原子力事業者の経営陣を1社ずつ呼んで規制への意見を聞く取り組みを始めた。
しかしどの事業者を呼んでも「経営陣が現場のことをわかっていない」という失望が募ったという。
「どんな不祥事を起こしても、電力インフラを担っているから事業が取り消されないと経営陣は思っている。
でも不祥事がばれると、もっと大きなツケを払うことになる。それを経営陣が理解しないといけない」
●核燃料サイクルはいらない
信頼が得られていないのは、不祥事だけが理由ではない。
原発を使い続けることに国民的なコンセンサスがないためだと、田中さんはいう。
「福島事故は非常に不幸だが、日本にとってもう一度、
エネルギー政策を国民と一緒に考える機会にしなきゃいけない。
でも、その問題提起すらないじゃないですか」
田中さんは在任中、政策に関する発言を控えてきた。政策は推進側の範疇(はんちゅう)であり、
「規制と推進の分離」という原則を守ったためだ。
ただ、政策に影響する大きな判断をしたこともあった。
高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)を巡り、運営主体を変えるよう、政府に勧告したことだ。
もんじゅは大量の機器の点検漏れなどの不祥事が相次ぎ、改善も見られなかったため、
運営主体の日本原子力研究開発機構に「失格」の烙印(らくいん)を押したのだ。
結局、代わりの運営主体は見つからず、政府はもんじゅを廃炉にした。
もんじゅは、原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルの中核施設とされる。
もんじゅがなくなれば、核燃料サイクルは破綻し、エネルギー政策全体にも重大な影響を及ぼす。
以前から高速増殖炉の開発には反対だったと、田中さんは明かす。
「非常にリスクが大きく難しい技術なのに、原子力機構には開発する能力がない。
プルトニウムを使うあてもない。欧米も結局は開発を止めたんです」
ところが政府は、高速増殖炉も核燃料サイクルも、開発の旗を降ろしていない。
昨年2月に閣議決定された国のエネルギー基本計画には、これらに加え、
革新軽水炉や高温ガス炉、核融合などの研究開発も進めるとされた。
推進のオンパレードで、まるで福島事故がなかった時代に逆戻りしたかのようだ。
当面のエネルギーを担う原子力は、通常の原発(軽水炉)だけで十分だというのが、田中さんの持論だ。
「核燃料サイクルはいらないし、核融合は絶対に実用化できない」と断言する。(続く)
毎日新聞 2026/3/10 06:00 URLリンク(mainichi.jp)
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