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★ “輪島塗”事業再開は6割ほど 能登半島地震1年 厳しい状況続く
能登半島地震の発生から1年がたちましたが、石川県輪島市で伝統工芸の「輪島塗」などを生産する事業者のうち、
事業を再開しているのは6割ほどにとどまっていることが地元の商工会議所の調査でわかりました。
12月上旬、輪島市の「輪島商工会議所」は、加盟する204の「輪島塗」を含めた漆芸に携わる事業者を対象に
アンケート調査を実施し、「地震や9月の豪雨災害を経て今、事業を行っているか」質問したところ、
「行っている」と回答したのは、129の事業者と6割ほどだったということです。
商工会議所によりますと、地震や豪雨で被災したあと、高齢を理由に廃業したり、
復興がなかなか進まない中で避難先にそのまま住まいを移さざるを得なくなり、
仕事を続けられなくなった事業者がいるということです。
また、再開した事業者の多くも避難先や間借りした施設で仮の工房を設けるなど
今も厳しい状況が続いているということです。
「輪島商工会議所」の日南尚之副会頭は「国や自治体から支援や補助は受けているが
100%元の状況に戻すのに苦労しているのが現状だ。時間はかかるが、少しでも皆さんからの
温かい注文に応えていけるよう頑張っていきたい」と話していました。
●地震と豪雨 2度の被災から事業再開目指す人も
漆芸に携わる事業者の中には、能登半島地震と去年9月の豪雨で2度にわたって被害を受けながらも、
本格的な事業の再開を目指す人もいます。
石川県輪島市中心部の二勢町の蔵田満さん(66)は「輪島塗」などに使われる木材を加工する
木地師と呼ばれる職人で「曲物」と呼ばれる丸い形の木地などを制作してきましたが、
地震で自宅や併設している工房が傾くなどの被害を受けました。
建物を修繕するなどして去年6月ごろから事業を再開しましたが、およそ3か月後の9月、
今度は豪雨で浸水の被害を受けました。
当時撮影した動画には、茶色い濁流が工房の横に止めてあった乗用車のボンネットの高さまで
押し寄せる様子が記録されていて、工房の壁には、今もその跡が残っています。
蔵田さんは、ボランティアの協力も得て工房にたまった泥をかき出すなどして去年11月から
事業を再び再開しましたが、これまで使っていた道具や機械の修理をしながら制作を続けているため、
作業できる量は地震前の半分に満たない状態だということです。
蔵田さんは「全国から応援や支援をいただいてお世話になった分をなんとか恩返ししたいし、
元の状態に戻せるように頑張っていきたい」と話していました。
●埼玉から支え続ける漆塗り作家も
輪島塗を含めた漆芸に携わる事業者が厳しい現状にある中、埼玉県では、
1人の漆塗り作家が地震直後から支援を続けてきました。
漆塗り作家の加藤那美子さん(43)は、高校を卒業後、およそ9年間、輪島塗の工房などで
漆塗りの技術を学んだあと、埼玉県蓮田市で工房を開いて漆塗りの器や箸などを制作しています。
地震の直後から被害を免れた漆器などを関東各地で販売する催しや、みずからの作品などを
販売して収益の一部を被災地に送る「チャリティー販売会」を開く活動を続けてきました。
去年11月には、輪島市を訪れ、厳しい環境の中でも復興を目指す多くの漆芸職人の姿を目にしました。
このうち、加藤さんがかつて修行した漆塗り職人の赤木明登さん(62)の工房では被災後に
職人が不足していて、製品の完成に時間がかかっていることを聞き、作業を手伝うために
制作途中のおわんや茶たくなど合わせておよそ400個を持ち帰りました。
また、20年以上、交流を続けている輪島塗などに使われる木材を加工する木地師と呼ばれる
職人の蔵田満さん(66)からは、支援をしてくれたお礼にと手作りのヘラを手渡されました。
加藤さんは、今、蔵田さんからもらったヘラを使って、輪島市から持ち帰った
おわんの強度を高めるために漆を塗った布地を貼り付ける「布着せ」などの作業を進めています。
加藤さんは、「この1年、自分が支援を続けていくことに意味があるのか悩んだ時期もありましたが、
輪島で復興を目指す人たちの姿を見て逆に自分が励まされました。輪島で身につけた漆芸の経験も
いかしながら、これからも支え続けていきたいと思います」と話していました。
NHK URLリンク(www3.nhk.or.jp)