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★「家族だんらん」の押しつけか 「年末年始がつらい」は社会的な問題
聞き手・中野浩至2024年12月20日 11時00分
もうすぐクリスマス、そして新年がやってくる。世の中がお祝いムード一色に染まる一方、
そんな空気感が苦手だという人もいる。
年末年始になるときまって家族だんらんが求められるような風潮に、息苦しさを感じているのだという。
「家族だんらん」とは何なのか。なぜ絶対的な「善」とされてきたのか。
現代家族のあり方について研究してきた社会学者の神原文子さんに聞いた。
◇
「家族だんらん」という考えは、明治期に欧米から日本に持ち込まれた「スイートホーム」という言葉に由来すると言われています。
ただ戦前は、家父長的家族制度に基づく男尊女卑の価値観が強く、
跡取りの長男だけが優遇されるなど子どもの間にも序列がつけられていて、
家族で楽しく食事をしたりおしゃべりしたりすることは必ずしも一般的ではなかったようです。
戦後の高度経済成長期以降、人びとの暮らしは、ムラ社会における、
近隣住民も含めた大きな「家」という単位から、都市社会の核家族単位に移っていき、
その中で「家族だんらん」という価値観が大衆化したと言えそうです。
●1年の帳尻合わせ
しかし、男性は長時間働かざるを得ず、子どもたちは塾や習い事、女性たちもパートタイマーとして働くようになり、
日常的には「家族だんらん」ではなかったと推察します。
単身世帯が増えており、「だんらん」できる家族自体が減少してきました。
それでも「家族は大切」という価値観は根強いものがあります。
仕事も学校も休みになる年末年始は、正月を祝うという名目で家族が集まれる貴重な機会でもあり、
「せめてこの日くらいは」と、1年の帳尻を合わせるようにわが「家族」を確認しているのではないでしょうか。
いつの時代でも、親から虐待を受けていたり両親が不仲だったりなど、家族との関係に悩む人は一定数いたはずです。
子どものころに家族との楽しい思い出をつくれないまま大人になり、今も実家に帰りたくない人や、帰る実家のない人もいます。
●価値観の押しつけ
このように家族が居場所と思えない人びとにとっては、帰省ラッシュや正月の準備など年末年始のにぎわいは、
「家族は大切に」「だんらんを楽しむべきだ」といった価値観を押しつけられるようなものです。
一方これまでは、これらの価値観に逆らうような発言をしたり、行動したりすることははばかられてきました。
だから、こんな人びとの存在が見えにくかったのでしょう。
それが今はようやく、年末年始に「帰省したくない」「義実家に行きたくない」といった思いや
1人で過ごす孤独感などを、ネット上や相談窓口で言葉として発することができるようになってきました。
たとえ少数であっても、年末年始につらい思いをしている人びとがいるという実態が
マスコミなどを通じて報じられ、広く社会に理解されることは、大きな意義があると考えます。
●無理して「家族らしく」振る舞う必要はない
年末年始がつらいという状況は、個人的な問題というより、社会的な問題と捉える必要があります。
無理をして「家族らしく」振る舞う必要はない、という価値観が広まればよいと思っています。
年末年始に孤独感を強める人びとには、人の温かさを感じることができるような居場所が求められます。
また、1人でのんびりと過ごしたい人びとにとっては、家族のだんらんを圧力と思わなくてもいいように、
年末年始の報道や番組などでメディアも配慮する余地がありそうです。
朝日新聞デジタル URLリンク(digital.asahi.com)