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★タイムマシンで戻っても 「異次元緩和またやる」と言えない日銀総裁
編集委員・原真人2024年12月20日 6時00分
日本銀行の19日の記者会見で植田和男総裁にこんな質問を投げかけてみた。
―もし植田総裁がタイムマシンで(異次元緩和がスタートした)2013年4月に戻り、
白紙から金融政策を決めるとしたら同じことを再びやりますか?
あけすけには答えにくい質問だったに違いない。
植田日銀は黒田東彦・前総裁が敷いた超緩和路線を基本的に引き継いできた。
そうすることでアベノミクスを支持する自民党から国会での総裁・副総裁人事の同意をとりつけた経緯がある。
それでも、植田総裁はこの日、この質問に「もちろん同じことをやります」とは答えなかった。
それどころか遠回しながらもかなり否定的なニュアンスがにじむ答えが返ってきた。
「申し上げられることは大規模緩和をやった場合、期待物価上昇率に与える効果は不確実で副作用もいろいろある。
しかも現状まだ(2%物価目標の達成は)全部はできていないかもしれない。そういうことを認識しつつ決定していくことになります」
●自画自賛ではないが「お手盛り」レビュー
私がこんな質問をしたのは、日銀がこの日、過去四半世紀の
金融政策を分析評価する「金融政策多角的レビュー」を発表していたからだ。
黒田総裁時代にも日銀は政策評価を2回やっている。いずれも日銀組織みずからが分析・評価し、
「課題はあるが総じてうまくいっている」という結論だった。
どんな場合でも自己採点は甘くなるものだが、これらはそもそも「異次元緩和はまちがっていない」と
世間にアピールするのが狙いだったから、そうなるのは当然だった。
だが今回の多角的レビューは少し趣が異なった。足元の金融政策の評価だけでなく、
過去四半世紀の日本経済と金融政策を長期的に分析しようと試みているのだ。
さらに国内外の学界の有識者らを集めた会議を何度か開くなど、外部の声を幅広く集めたところに特徴がある。
とはいえ、報告書をまとめるのはやはり日銀であることに変わりない。
仕上がったものは黒田日銀のような「自画自賛」ではなくても、総じてお手盛りぎみだった。
「私が総裁でも異次元緩和をやった」とは言えなかった植田総裁にとって、これが本当に納得できる内容だったのかどうか。
たとえば13年以降の大規模な金融緩和の効果と副作用について、
同レビューは「金融市場や金融機関収益などの面で一定の副作用はあったものの、
現時点においては、全体としてみれば、わが国経済に対してプラスの影響」と総括している。
だが、異次元緩和の「最大の罪」と言っても過言ではない財政悪化についてここでは踏み込んだ分析がない。
日銀は黒田日銀下の10年で、のべ900兆円超の国債を買い上げ、いまも600兆円近い国債を保有している。
これが政府や国会の財政規律を弱めたのは間違いない。にもかかわらず「プラス」と言い切れるのか。
レビューでは大規模緩和は「財政ファイナンス」ではない、と言い訳しているだけだ。
「プラスだった」と言うなら異次元緩和がスタートした13年4月に立ち戻っても、もう一度同じことをやれるはずではないか。
そんな問題意識から冒頭の植田総裁への質問となったのである。(続く)
朝日新聞デジタル URLリンク(digital.asahi.com)
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