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★フクシマの教訓どこに 佐賀の原子力災害拠点施設で一時「電源喪失」
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で原子力災害が起きた際に対応の拠点となる
「佐賀県オフサイトセンター」(同県唐津市)で2023年9月、落雷による停電が2度あり、
7日間にわたって電源設備が正常に働かない事態が生じていたことが佐賀県などへの取材で判明した。
オフサイトセンターは重大事故時に現地対策本部が置かれる拠点となるが、
停電時に災害が起きていれば必要な役割が果たせない可能性もあった。
11年の東京電力福島第1原発事故では、福島第1原発から約5キロの場所にオフサイトセンターが
置かれていたが、地震の影響で通信機器が使えないなど支障が出たため現地対策本部が機能しなかった。
こうした反省を踏まえて国の原子力施設などの防災対策が見直され、
それに基づき内閣府が12年にガイドラインを作ったが、
今回の事態で災害への脆弱(ぜいじゃく)さが解消できていない現状が浮き彫りになった。
●落雷で「誘導雷」発生
佐賀県オフサイトセンターを管理する佐賀県などによると、落雷被害があったのは23年9月15日と21日。
いずれも近くに雷が落ちるなどして一帯が停電。その際、周囲の電線などに過大な電圧や電流が発生する「誘導雷」が発生した。
誘導雷の影響で15日午前4時半ごろ、施設内の設備機器などを一元的に管理・制御する中央監視制御装置が故障。
自動で非常用発電機に切り替えられなくなったため外部の業者を呼んで手動で切り替え、電源は6時間後の午前10時半ごろに復旧した。
一方、中央監視制御装置は故障したままで、施設の設備機器の制御や、
緊急時の非常用発電機への移行は手動でしか行えない状態が続いた。
さらに、6日後の21日午前9時ごろの落雷でも誘導雷が発生し、今度は非常用発電機の起動装置が故障し停電。
その後、外部からの送電が復旧したため、約2時間後に停電は解消した。
だが、同日中に業者が来て起動装置を修繕するまで非常用発電機は使えず、中央監視制御装置の復旧もこの日までかかった。
●福島事故ではオフサイトセンターが「機能不全」に
オフサイトセンターを巡っては、福島第1原発事故時に機能しなかった反省を受け、
原子力安全委員会(当時)が対策の見直しをするなかで「地震・津波などの自然災害に対する頑健性がなく、
交通遮断や通信設備の使用不能などによる要員の参集遅れや非常用発電機の故障、通信インフラのまひなどにより
機能不全に陥った」と指摘していた。
こうした指摘を受け、国はガイドラインを新たに設け、オフサイトセンターに、避難経路
▽放射線モニタリング▽原子力災害時医療▽気象▽原子力事業所内の状況―などの情報を
収集・発信する多様な設備を複数備えることを求め、地震や津波などを伴った複合災害時でも
電源の安定的な確保が「必須」とした。
ただ、落雷被害があった時点のガイドラインには誘導雷対策は明記されていなかった。
●識者「オフサイトセンターの災害リスク検証必要」
国は佐賀県の事案を受けて今年3月、誘導雷による雷被害を防止する設備を設置するようガイドラインを改正。
担当者は「このような大規模停電は初めてかもしれない。他のオフサイトセンターでも対策を行うよう提案していく」と話す。
佐賀県の危機管理防災課は「当時の国のガイドラインにのっとり(設備を)整備、管理していた。
中央監視制御装置や非常用発電機の点検は23年8月末に実施し問題はなかったが、誘導雷は想定外だった」と釈明。
停電があった事実について公表していなかったが、「県民の生命や財産に影響がある危機事象でなかったため」としている。
県は再発防止策として、25年3月までに誘導雷対策の機器を増設するほか、外部の業者を呼ばなくても、
職員が手動で非常用発電機を起動できるようにする。
原発の避難について詳しい広瀬弘忠・東京女子大名誉教授は
「原子力災害時に情報共有の拠点となるオフサイトセンターが単なる雷で使えない事態は影響が大きい。
他のオフサイトセンターも含めて自然災害リスク対策の検証が必要だ」と指摘する。【森永亨】
毎日新聞 2024/12/18 20:00(最終更新 12/18 22:38) URLリンク(mainichi.jp)
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