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★アマゾンが求める「競争力ある価格」 応じれば赤字、嫌と言えぬ関係
中野浩至 小寺陽一郎2024年11月26日 17時52分
ネット通販大手のアマゾンが26日、公正取引委員会の立ち入り検査を受けた。
出品者に対して「競争力のある価格設定」を求めてきたことが事実上、値下げ強要の疑いがあると判断された。
赤字覚悟でもその要求に従わざるを得ないのはなぜなのか。出品者らが取材に実情を明かした。
アマゾンに日用品を出品している男性(37)は1年ほど前、害虫駆除用品約300点の販売を計画した。
1点あたり仕入れ価格約1千円に対し、売値は約2千円。送料やアマゾンへの手数料を差し引いた利益は100円ほどを見込んだ。
アマゾンが運営するネット通販サイト「マーケットプレイス」に出品した。
売れ行きが悪く、理由を探ったところ、この商品は「カートボックス」に入っていなかった。
カートボックスとは、商品ごとに優先的に表示される枠のこと。1枠だけで目立つ位置にある。
公取委は、値下げに応じたり、アマゾンの一括サービスを利用したりしている出品者が選ばれていたとみている。
一方で他の出品者の欄は目立たず、購入に至るまで何回もクリックが必要だ。
カートボックスに入るかどうかで「売り上げのインパクトは全然違う」と男性は言う。
やむなく100円ずつ値下げして様子を見たところ、1500円くらいでようやくカートボックスに入った。
だが、赤字は免れない。サイトのテクニカルサポートに尋ねると、
「他の販売サイトと比べて競争力のある価格を推奨している」と言われた。値下げを強制されていると感じた。
●それでもアマゾンを離れられない理由
それでも男性がアマゾンを離れられない理由は、その集客力の強さにある。
在庫を抱えたくない立場としては、魅力的なマーケットであることは間違いないという。
「9割は何の問題もなく売れて利益も出る」と言う一方、「残りの1割で意味のわからない価格設定を求められる」と男性。
「本来自分たちに価格の決定権があるはずなのに、それが許されない」
ある化粧品メーカーの男性社長(62)は昨年秋ごろ、
アマゾンに出品する取引先から「カートボックスに入れず困っている」と相談を受けた。
●「アマゾンににらまれたら商売できない」
取引先に送られたアマゾンからのメールには、「他社の小売りサイトにおける価格と比較して
競争力のある価格が設定されていない状態となっております」とあった。
「競争力のある価格」として具体的な金額も明示されており、
男性は「指定の価格まで値下げしないと、カートボックスには表示させられないということだろう」と話す。
男性は独占禁止法違反ではないかと抗議するように勧めたが、
取引先は「アマゾンににらまれたら商売ができなくなる」と言う。
代わりにアマゾンに是正を求めるとともに、公取委に事案を通報した。
先週になって公取委側から連絡があり、経緯の説明を求められたという。
●カートボックス入りだとクリック4回、外れると6回
男性は「アマゾンは自分たちに強大な力があるとわかっていて、平気で不利な条件を出品者に求めてくる。
出品者が『嫌だ』とすら言えなくしている事態は改善されるべきだ」と話す。
カートボックスとはどのようなものなのか。
記者がパソコンのブラウザーで試しに家庭用の洗剤を商品名で検索してみると、
写真とともに商品の一覧と価格が画面いっぱいに表示された。
約1100円と表示されたある商品の写真をクリックすると、
右側に黄色やオレンジで「カートに入れる」や「今すぐ買う」のボタンが表示された。
「販売元」を見ると、マーケットプレイスの商品だとわかった。
「今すぐ買う」のボタンはすぐそばにある。
その下にある黒色の「他の出品者」の文字をクリックすると、20以上の出品者による同じ商品が現れた。
もっとも安い商品は、先ほどのものより数十円安かった。
カートボックスの商品は検索から注文確定まで最短4クリック。
一方、最安値の商品を買うためには、最短で6クリックが必要だった。
カートボックスに入った出品者の商品のほうが目立つ上、購入までの手間も少なかった。
いずれも送料は無料なので、消費者からすると、なぜ割高な商品がトップに表示されていたのか、
わからない形になっていた。(中野浩至、小寺陽一郎)
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