24/11/16 16:48:31.36
★「いつか廃炉できる」言い続ける大人は無責任 道筋なしに未来描けぬ
聞き手・力丸祥子2024年11月16日 9時00分
2011年、3基の原子炉がメルトダウン(炉心溶融)した東京電力福島第一原発で、
溶けた核燃料(燃料デブリ)の取り出しがようやく始まった。福島の人々は廃炉作業をどんな思いで見守っているのか。
福島の外に住む人にできることは。福島県いわき市を拠点とする地域活動家の小松理虔さんに話を聞いた。
●「廃炉」を定義しない 国や東電のずるさ
0・7グラムの試験的なデブリ取り出しを大きな一歩だと信じたい一方、
880トンとされる全体からみると、どれだけの意味があるのかとも思います。
両者の間を行ったり来たりして、引き裂かれるような感覚です。
原発事故を経験した僕にとって、国と東電が廃炉を完了させるとしている2051年は大事な年です。
自分や子どもの年齢、地域の姿を想像し、少なくともそこまでは頑張って生きて、
原発事故の終わりを見届けたいと思ってきました。
多くの福島県民は、イチエフ(福島第一原発)の土地が更地になり、町に返還されるのが廃炉だと考えているでしょう。
でも、国や東電は、廃炉が一体何をさすのかを設定してきませんでした。
非常にずるいし、それが県民を苦しめています。
明確に廃炉を定義し、スケジュールも検討する時期に来ていると思います。
もし、チェルノブイリ原発のようにコンクリートで覆って「石棺」にするという話になったら、「ふざけるな」という声は出るでしょう。
費用や時間を費やしましたから。ただ、「やっぱりね」と納得感を抱く人も少なくないと思います。
一度掲げた廃炉の目標について軌道修正が難しく、行く末が見通せないままでは、自分たちの未来を描けません。
地元には、廃炉に役立つ技術開発に携わりたいと語る子どもたちもいます。
具体的な道筋がないなかで「いつかは廃炉できる」と言い続けている大人は無責任ではないでしょうか。
同じ被災地の女川原発が再稼働しました。福島県民の間でも、電気代の値上がりは嫌だし、
脱炭素も進めないといけないから、原発を動かすしかないと考える人もいます。
それに加えて、原発事故からの13年で、エネルギーについて語ることの難しさや徒労感、
何を言っても国は聞いてくれずに粛々と動いていってしまうことへの諦めがあります。
この雰囲気は処理水の海洋放出のときにもありました。この諦めや徒労感こそが、
地域の底力や復興に向かう力を奪っていくと感じています。
福島の外にいる人は、廃炉やエネルギーの問題に触れちゃいけない、
と思っているかもしれないですが、むしろ、語ってほしいです。
議論の広がりが、廃炉の定義やスケジュールについて国や東電にアップデートを促す力になるかもしれません。
この問題は福島の人たちだけで考えてください、向き合ってくださいというほうが酷です。(聞き手・力丸祥子)
小松理虔さん こまつ・りけん
1979年生まれ。福島県いわき市を拠点に活動。
震災後、住民有志による海洋調査チームの立ち上げや県外向けツアーの企画に携わる。
朝日新聞デジタル URLリンク(digital.asahi.com)