24/11/14 09:08:51.20
>>4の続き
●住宅がもたらす社会不安
高騰ということでは、家賃の上昇も非常に大きくなっています。これがホームレスの問題にリンクしています。
ちなみに、ニューヨークの場合は、家賃が払えずにホームレスになるというケースは多くありません。
まず、冬は厳しいので、簡易住宅などには住めません。
また、定職についていれば、ある程度は公的扶助などがあり、定職があるが家を失うというケースは限定的です。
ですから、NYのホームレスはコロナ禍で刑期をカットされた元受刑者や、麻薬による患者などかなり
問題を抱えたグループが多くなっています。問題を複雑にしているのは、南部から送り込まれる難民申請者が
ホームレスのシェルターを占有していることですが、ホームレスは管理を嫌うので、
シェルターより路上に出てしまうというNYの事情があります。
ちなみに、冬は寒いので彼らは地下鉄構内に入ってしまうわけで、これがコロナ禍以降の問題になっています。
厳しいのは西の方で、カリフォルニアやワシントンなどでは、まず中部から西部の保守州が
「福祉コストの負担を拒否」して、ホームレスを太平洋岸に送り込んでくるという問題があります。
また、特にサンフランシスコやLAでは、家賃の高騰によって住めなくなった人が、
定職につきながら簡素な移動住宅に寝泊まりするような状況があり、改善されていません。
トランプは「不法移民を追放すれば住宅の需給関係が好転する」などと言っていますが、それはそう単純ではありません。
この住宅問題に関しては、ハリス陣営のほうが公的資金を潤沢に投入して、全米にリーズナブルな住宅を提供するとしており、
その予算のためには大増税が必要なぐらいの大きな構想を公約に掲げていたのでした。
ですが、ハリス氏はこの住宅政策を最終段階の選挙戦では前面に出すことをしませんでした。
これは戦術ミスとしか言いようがないと思います。
●アメリカの格差の根源的問題
物価にしても、雇用、住宅にしても、とにかく有権者の苦しみの原因としては格差の問題があります。
トランプ陣営は、格差を放置し富裕層には減税を与えるクラシックな共和党路線と、
貧困層、現場労働者の怨念をすくい上げるイデオロギー運動を接続するというウルトラCを続けています。
この無理な組み合わせがどういう展開を進むかは全く不透明ですが、とにかく、富裕層の代表であるにもかかわらず、
格差の底辺を実感している層を取り込んでいるのは事実です。
一方で、民主党の側は結局のところ「持てる層」「意識の高い層」の代表という位置づけを脱することができませんでした。
これが今回の選挙の本質的な敗因であると思います。
バーニー・サンダース議員が「民主党が労働者を代表していない」と激しく追及していますが、確かにそのとおりです。
またトランプ支持に回った多くの若者が「これでグローバリストをやっつけた」などと騒いでいますが、
それも印象としては理解できます。
そこには根源的な問題が横たわっているのです。それは、アメリカは既に製造業依存を脱してしまったということです。
現在のアメリカがGDPで世界一の座を維持しているのは、製造業を脱して知的産業主体の先進国経済を作り上げたからです。
そして知的付加価値は簡単に国境を超えるので、アメリカは世界から人材が集まる場所となりつつ、
アメリカ発の技術やカネが世界を回るようになっているのです。
日本の場合は、そこに英語か日本語かという言語のバリアがあるので、
話は別になってきますが、アメリカの場合は言語のバリアはありません。
そこにあるのは、知的付加価値の生産に関われるかそうではないかの格差なのです。
これは残酷な問題ですが、どう考えても脱することのできない問題です。
文明も教育も言語も、アメリカはとにかく無理矢理にでも知的生産性を創造するような社会を作り上げてしまいました。
そして、知的付加価値を作れる人と、そうでない人には巨大な生産性の格差があり、分配の格差もあるのです。
これは、どう考えても変えることはできません。
問題は、民主党の側にそのパラドックスに関する自覚が足りないことです。
続く