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★「手取りを増やす」=減税でいいのか 元議員が大連立を期待する理由
聞き手・山田史比古2024年11月10日 17時00分
与党が大敗した衆院選。「手取りを増やす」と訴えて躍進した国民民主党と、
自民・公明両党による政策協議のゆくえが注目されています。
旧民主党で、現在の国民民主党の幹部らとともに活動した経験もある元参院議員の峰崎直樹さんは、
同党が若い世代を中心に支持を広げた背景に雇用の劣化があると分析しつつ、政策には疑問があると言います。
「小さな政府」路線のきっかけに
―国民民主は、税額を算出するにあたって所得から差し引く「基礎控除」額の引き上げによる所得税の減税や、
実質賃金がプラスになるまでの消費税減税、社会保険料の負担軽減や「若者減税」などを訴えました。
確かに、そうした訴えが若い世代の支持をつかんだところはあるのでしょう。
特に、働く人の約4割を非正規労働者が占め、正規との格差はとても大きいまま。
多くの人が生活苦を感じているなか、「裏金」の問題もあり、怒りが顕在化したのだとみえます。
ただ、そこで減税や社会保険料を下げることには、私からすると違和感が強い。
一時的には手取りが増えて、一見すると自分たちによくしてくれているように見えるのかもしれない。
しかし、その財源が今まで何に使われていたのかを考えると、圧倒的に社会保障です。
日本の場合は少ないながらも、教育にも使われている。
それをこれからさらに増やさなければならないときに、ありえない話です。
福祉国家ではなく、「小さな政府」路線を突き進むきっかけにもなりかねません。
―国民民主党は、「トリガー条項」の発動によるガソリン税の引き下げも訴えています。
これも、持続可能な社会をつくっていくため、環境問題を重視しなければならない時代に、
税を下げることでガソリンを消費しやすくするということで、時代の潮流から逆行しているのではないでしょうか。
時代にあわないといえば、基礎控除にかかわる「103万円の壁」も、
夫が片働きで妻は専業主婦という昭和の雇用を前提にしたものです。
●「今だけ、金だけ、自分だけ」に乗っている
―いくらまでの範囲で働けば、「扶養」に収まり、所得税を払わなくてもいいかという線引きですね。
社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」などもあります。
今、公的年金なども専業主婦世帯をモデルとするのではなく、夫婦がともに長く働くことで
少子高齢化のなかでも持続可能な仕組みにしていこうとしています。
厚生労働省は、厚生年金への加入に向けて「106万円の壁」を壊そうという案を提起しています。
男女それぞれがまっとうな賃金を得られ、働きたい人が働き続けられる社会にするために
どうすればいいのかを考えるべきときに「103万円」の壁をいくらに引き上げるのかというような
論戦を国会ですることは、求められるものとは違うんじゃないかと思います。
―手取りが長く増えないなかで物価が上がり、それだけ国民生活の苦しさは切羽詰まっているということでは。
しかし、そこで手取りを増やすために税金や社会保険料を減らすのだという考え方は、
「今だけ、金だけ、自分だけ」という言葉が一時拡散しましたが、その流れに乗っているように見えますね。
―東大の先生が使われて広がった言葉でしょうか。自己中心的、刹那(せつな)主義というイメージがある言葉です。
税金や社会保険料を減らして誰が喜ぶのか。やはりメリットが大きい高額所得者であり、
「国が余計なことをするな」という新自由主義的な考え方の人ではないでしょうか。
国家は税や社会保険料を調達することで、誰もが安心して生活できる基盤をつくっています。
国による所得再分配が弱くなれば、ただでさえ生活が苦しい層が、さらにひどいことになりかねない。
また、所得の再分配は、高所得者から低所得者への再分配だけではありません。
現在の世代と、将来の世代との間での時間的な再分配もあります。
現在の世代が負担するべきものを減らすことが、将来世代の負担を増やすことにつながってはいけません。(続く)
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