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★剣が峰の衆院選、与党過半割れで円安・株安リスク-政局は日銀も縛る
佐野日出之、グラス美亜 2024年10月25日 8:00 JST
揺らぐ自公政権継続の前提、円相場は既に下落基調
過去の例では自民圧勝以外、株は「下落か良くて若干上昇」
27日投開票の衆議院選挙で自民党と公明党の連立与党が過半数割れとなれば、円相場と日本株が一段と下落する可能性がある。
10年以上にわたり安定していた日本の政治が一気に流動化し、追加利上げのタイミングを探る日本銀行の手足も縛られかねない。
報道各社による直近の世論調査では、自民党の裏金問題に対する逆風もあり、
自公両党が過半数を確保できるか微妙な情勢となっている。
金融市場では自公が過半数割れとなっても、国民民主党などとの連立政権あるいは
閣外協力により政権にとどまる可能性が高いとみられている。
ただ、政治を巡る不透明感から日本株や円相場の売り圧力が強まることは避けられそうにない。
ピクテ・ジャパンの市川真一シニア・フェローは、「自公で過半数割れとなっても、
野党が統一して首相指名に臨むことは考えにくく、政権の枠組みが大きく変わる可能性は低い」としながらも、
「確実に政権が不安定化することになるだろう」と指摘する。
「来年参議院選挙があることを踏まえると、このままでは選挙に勝てないというムードが自民党内で台頭し、
もう一度総裁選のやり直しという可能性も十分ある」と予想。来年7月に衆参同時選挙もあり得るとみる。
●日銀利上げに影響も
衆院選を経て石破政権が弱体化すれば、総裁選で争った高市早苗前経済安全保障担当相をはじめ、
日銀の利上げに批判的な勢力が与党内で力を増す可能性がある。
また、過半数割れの場合に自公が協力を求める可能性が高いとされる国民民主党と日本維新の会は、
拡張的な財政政策とともに緩和的な金融政策を志向しており、日銀の利上げに対するハードルは高くなりそうだ。
一方、日本の政治の影響は一時的との見方も多い。アストリス・アドバイザリー・ジャパンのインベストメント戦略責任者、
ニール・ニューマン氏は、政権交代の可能性は小さく、マイナスの影響も長続きしないとみる。
ニューマン氏は「選挙後の政権のスタンスによって日銀の利上げペースは影響を受けるものの、
利上げ自体は基本的に既定路線だ」とし、選挙後の30ー31日に予定される
日銀金融政策決定会合により注目する投資家も多いと話す。
とはいえ、大方の市場関係者が想定していた、比較的安定した自公政権の継続という
大前提が揺らぎつつあることで、市場はざわつき始めている。
9月に1ドル=139円台まで上昇していた円相場は今週、153円台と7月以来の水準に下落。
米国の利下げ期待の後退が主因だが、円はドル以外の主要通貨に対しても弱含んでおり、
日本の総選挙に対する警戒感の高まりがうかがえる。
JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは、株式市場は連立与党の過半数割れを
織り込みつつあるとした上で、過去の例では自民党が単独で圧勝した場合に選挙後1-3カ月間株価が上昇するが、
それ以外は下落か良くて若干の上昇だったと指摘。今回は後者のパターンが当てはまりそうだと予想する。
●財政拡張
セクター別では、石破政権による防衛費増額期待の追い風を受けていた防衛関連銘柄に
売り圧力が強まる可能性があると、大和証券投資情報部の高取千誉上席課長代理は指摘する。
一方、来年の参院選に向けて「国民受けのいい最低賃金引き上げや物価対策などの政策を打ち出す
可能性が強まると消費にはプラスとなり、消費関連銘柄は買われる可能性も出てくる」とみる。
拡張的な財政政策は債券相場にとって重しとなる。既に市場では財政リスクを反映しやすい
超長期債への売り圧力が強まっており、30年国債と10年国債の利回り格差は120ベーシスポイント
(bp、1bp=0.01%)以上と、過去25年間の最高水準に向け拡大している。
与党過半数割れは日本市場のボラティリティーを高め、株安・円安・債券安のトリプル安を招く可能性もある。
Bloomberg URLリンク(www.bloomberg.co.jp)