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★介護保険 負担増の意味 「必要な時に使えない」ならば
服部万里子・渋谷介護サポートセンター理事長 2024年10月15日
いざという時、介護保険はだれもが使えるものになっているのでしょうか。
ケアマネジャーとして25年の経験がある、渋谷介護サポートセンター理事長の服部万里子さんに聞きました。
【聞き手・須藤孝】
◇ ◇ ◇
―介護は自分のこととして想像しにくいものです。
◆自分や自分の親が介護が必要になるとはあまり想像できませんし、考えたくもありません。
しかし、ある日、突然やってきます。
介護が必要になる原因で、一番多いのは認知症です。
2番目は脳梗塞(こうそく)や脳溢血(いっけつ)などですが、3番目は老衰です。
老衰しない人はいません。だれにでも、歩けなくなる、買い物に行けなくなることはおこります。
でも、いつそうなるか、わかる人はいません。
―直面してからあわてます。
◆大切なことは、自分がどうしたいかです。みな、自分のことは自分で決めていたはずです。
介護が必要になったら、人に決めさせていいのか、ということです。
●負担増の意味
―介護保険は、自分で決めることを支援する保険です。
◆介護保険が導入された時には反対はあまりありませんでした。いずれ、みな、高齢者になります。
その時に自費でやってくださいと言われても困るから、社会で対応しましょう、となりました。
考え方は間違っていません。問題はやり方が変わってきたことです。一番大きなことは負担増です。
1割負担だったものが、2割負担や3割負担が出てきました。
所得に応じてということですが、1割負担が2割負担になることは、負担が2倍になることです。
払えない人はどうするのでしょう。受けるサービスを減らすしかありません。
足りなかったら自費で、と言われても、自費で払えないから介護保険を作ったはずです。
介護保険料は40歳を過ぎれば、死ぬまで払っているのですから、その範囲内で賄えるようにすべきです。
―高齢化で介護が必要な人が増えているために財政が厳しくなっています。
◆結論から言えば、今の保険料と税金の割合を変えて、税金からの投入を増やすしかありません。
●人を見ることにはコストがかかる
―現実にはそのような政策が実現する見通しはありません。
◆人を見ることにはコストがかかります。一人一人は生い立ちも価値観も違います。
人を見た上で取り組まないと、みな一緒にはできません。ところが、国には、費用をトータルで抑制する方針があります。
自己負担を増やしてサービスを使えないようにすることで、費用を抑えて制度を維持しようとするならば、本末転倒です。
保険料を払わせておいて、必要な時には使わせないように誘導するなら、詐欺です。
―なんのために介護保険があるのかということですね。
◆介護保険は介護を社会で担うためのものです。幅広いサービスを用意して、さまざまな状況にある人に対応するものです。
もちろん公的サービス以外の地域の支えなども必要です。しかし基本は社会保険としての介護保険です。
社会保険を維持するために公的な負担を増やすのは当たり前のことです。
―なぜ抑制が先に立つのでしょうか。
◆利用者本人のことを考えていないからです。根本的な間違いです。
人が生きることは、自分なりの生き方を貫ける、自分の意志を貫けることです。
自分のやりたいことが、すべてではなくてもできることです。
そして人と関われるということです。介護保険はそのためにあります。
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