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★「山手線の内側には泊まれない」 出張族から悲鳴 宿泊代DPの裏側
「山手線の内側にはとてもじゃないが、泊まれない」。長野県から東京出張に来た60代の男性会社員がこぼした。
月に3回ほど東京に出張するが、会社には出張宿泊費は1泊1万円以内という「鉄のおきて」があるのだ。
新型コロナウイルス禍の前は、同じ予算で「ハイクラス」なビジネスホテルも選べたが、
今では1万円以内で泊まれる部屋を探すのに一苦労。「どうしても訪問先から離れた場所になってしまう」と話す。
東京都心部の宿泊代が過去最高水準で推移している。
背景を探ると、宿泊業界に広く活用されてきたダイナミックプライシング(DP、変動価格制)に生じた、ある変化があった。
●「ラーメン1杯3000円」が基準に
都内のビジネスホテルを中心に262の宿泊施設が加盟する「東京ホテル会」によると、
平均客室単価は今年4月に史上最高の1万8649円を記録した。
8月もコロナ禍前の2019年同月に比べ約1・5倍の1万6556円。
22年12月以降、21カ月連続で、その月の史上最高値を上回り続けている。
最近の値上がりの理由について、高部彦二会長は「ラーメン1杯3000円の世界」という表現をする。
どういうことなのか。
物価上昇(インフレ)の影響もあって、海外ではラーメン1杯が円換算で3000円が当たり前。
そうした感覚を外国人観光客が日本国内に持ち込む。
その結果、「外国人観光客向けの価格設定が宿泊業界の基準になった」(高部会長)―というわけだ。
ただし、全国一斉に値上がりしているわけではなく、訪日外国人観光客が集まる
観光地や大都市が値上げの中心で、東京が特に顕著だ。
●価格変動「上限」の引き上げ
宿泊業界は、曜日や休日の並び、稼働率の増減などに応じて
価格を変化させるダイナミックプライシングが広く浸透している。
客室単価が急騰した主因は、円安・ドル高を追い風にしたインバウンド需要の回復だが、
深刻な人手不足による人件費や、光熱費の高騰も影響している。
しかし、それだけで価格の高騰が起きたわけではない。引き金は何だったのか。
業界関係者は「ダイナミックプライシングの変動幅の上限がかつてないほど引き上げられた」と明かす。
東京ホテル会の高部会長によると、17~19年の標準的な変動幅は1泊6000~1万2000円ほどだったが、
23年以降は7000~1万5000円ほどに拡大したという。
下限は1000円の引き上げだが、上限は3倍にあたる3000円の引き上げ幅になった。
実際の変動幅は宿泊施設ごとに異なるが、都心部は平日1万円超が当たり前になっており、
土曜になれば2万5000円ほどに値上げする有名ビジネスホテルもある。
大まかな宿泊エリアを決め、近隣の価格を比較して、どこに泊まるか決める宿泊客が多いから、
近隣施設の値上げは自社にとっても値上げの好機になる。こうして宿泊代高騰の波が広がっていく。
●高級ホテルより「ビジネスの方が高い」
ダイナミックプライシングの上限価格の引き上げの影響で、
ビジネスホテルが高級ホテルよりも高くなるという「逆転現象」も現れている。
「ついにこの時が来たか」。ある業界関係者によると、コロナ禍前の16~18年ごろ、
アパホテルなどのビジネスホテルが一時的に、高級ホテルの帝国ホテル東京の最安料金を1万~2万円ほど上回り、業界に衝撃を与えた。
京都では同じ頃、閑散期なら1泊5000円の部屋を4万~6万円まで引き上げた外資系ビジネスホテルもあったという。
その後、ホテルの建設ラッシュもあって価格の変動幅はいったん落ち着きを取り戻したが、
インバウンド需要が回復した昨夏以降、宿泊代は再び高騰。
花火大会などのイベントによっては、平日1万円ほどのビジネスホテルが
「花火が見られる」という触れ込みで10万円で売れることもあったという。
(続く)
毎日新聞 2024/10/16 06:00(最終更新 10/16 12:24)URLリンク(mainichi.jp)
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