24/08/09 11:37:44.65
★GMとフォード、大型EVの投資見送り 収益化に限界
2024年8月8日 5:05
【トラバースシティ（米ミシガン州）=川上梓】米自動車大手がピックアップトラックなど大型の
電気自動車（EV）の投入を見直す。ゼネラル・モーターズ（GM）は投資を2年延期し、フォード・モーターは自社開発を撤回する。
米バイデン政権が目指した国産EVの育成は進まず、堅調だった新車販売も長引く高金利で減速しつつある。
大統領選後の政策が不透明なこともあり、投資に慎重な動きが続く可能性がある。
●フォード、大型EVの開発見送り
「EV市場は当初の想定より急成長していない」。
GMのマーク・ロイス社長は7日、ミシガン州で講演し、市場拡大が前提だったEV戦略を見直していると話した。
GMなど「ビッグ3」はEV投資を相次いで延期している。
GMは7月23日、ミシガン州のオリオン工場で計画していたEVのピックアップトラックへの投資を2年延期し、2026年半ばにすると発表した。
延期表明は23年に続き2度目だ。
GMは25年までにEVの世界生産で100万台を目指すとしてきた目標も見直す。
22年に掲げ、投資を先行したが、24年のEV販売台数見通しは20万?25万台にとどまる。
4-6月期のEV販売台数は前年同期比で4割増えたが、利益の大半をガソリン車が支える。
フォードは大型EVの自社開発を見直し、今後のEV投資を小型車中心に切り替える。
大型EVは効率化に向け、中国企業を含む新たなパートナーを増やす方針だ。
カナダのオンタリオ州の工場で計画していたEVの大型多目的スポーツ車（SUV）への投資は見送り、
同じ工場でガソリン車のピックアップトラックに投資する。
背景に厳しい事業環境がある。
フォードの4-6月期のEV事業のEBIT（利払い・税引き前損益）は11億ドル（約1600億円）の赤字。
事業別開示以降、6四半期連続の赤字で、つくるほど赤字が膨らんでいる。
●低コスト化と航続距離に限界
長距離移動が多い米国は大型車が主役で航続距離を重視する消費者が多い。
充電網が不足する中、ガソリン車やハイブリッド車（HV）の方が圧倒的に人気がある。
EVは小型であっても「300マイル（約480キロメートル）の航続距離」（GMのロイス社長）が消費者に選ばれる条件になる。
長距離移動が中心の大型車の場合はさらに航続距離を延ばす必要があるが、EVでは電池容量を増やさない限り難しい。
EVは電池がコストの3-4割を占める。フォードのジム・ファーリー最高経営責任者（CEO）は
「ガソリン車は車が大きいほど利益が出たが、EVは真逆だ。車が大きく、電池が大きいほど利益を圧迫する」と話す。
米バイデン政権は2年前に成立したインフレ抑制法（IRA）で北米産のEVへの税優遇を決め、
電池の域内調達も促したが、米国が輸入する電池の約7割は依然、中国製だ。
●米新車販売は息切れ、ローン組めず
ここに来て、米国の新車販売全体にも陰りが見える。
調査会社マークラインズによると米国の7月の新車販売台数は2カ月連続で前年同月から減少した。
前年比で12%増えた23年から一転し、24年に入り、需要に息切れ感が出てきた。
ビッグ3の1角で「クライスラー」を傘下に持つ欧州ステランティスは1-6月の米国販売が前年同期比で18%減った。
不採算ブランドを見直し、減産や値下げも検討する。
背景には自動車ローン金利や保険料の高止まりがある。
ニューヨーク連邦準備銀行によると金融機関が自動車ローン貸し付けを却下した割合は
24年6月に29.4%と過去1年間、30%前後の高水準で推移する。
車以外のコストの増加が需要の下押しにつながっている。
販売の減速懸念からメーカーは投資を選別し始めている。
●選挙見据え 投資様子見も
各社は11月の大統領選挙を控え、投資に慎重にならざるを得ない事情もある。
大統領選は共和党のトランプ前大統領と民主党のハリス副大統領の争いとなる。
トランプ氏はEV嫌いとされるが、米テスラのイーロン・マスクCEOと歩み寄る姿勢も見せる。
一方、ハリス氏はバイデン大統領の政策を踏襲すると見られるが、補助金や環境規制を含むEV政策の全体像はまだ見えない。
S&Pグローバルモビリティのマイケル・ロビネット氏は「EV投資後退を背景にハリス氏は
バイデン政権のEV政策の一部を修正しなければならない可能性もある」と話す。
日経新聞 URLﾘﾝｸ(www.nikkei.com)