24/07/04 14:24:21.32
>>1の続き
訴訟の最大の目的は、違憲判決を勝ち取り、憲法解釈を閣議決定前の状態に戻すことだ。
「最高裁判決でなくても、下級審での判決理由の中で違憲性を指摘するだけでも重要な意味がある。
全国各地の裁判官に判断を仰ぎ、司法の役割を果たしてもらおうと期待をかけた」と語った。
これまで全ての訴訟で原告の訴えは退けられ、大半の判決は違憲かどうかの判断をしていない。
伊藤氏は「各地の判決に共通するのは『法的に保護される権利や利益の侵害はない』
『人格権が脅かされる戦争の危険性がない』という内容で、徹底して憲法判断を回避している。
裁判官は安全保障に関して法律家としての役割を全く果たしていない」と司法の対応を批判する。
それでも、問題提起を続ける必要性をこう強調する。「主権者の意思を無視した安保法が、
専守防衛であるこの国の形を変えてしまった。そのことを国民が忘れていないと訴え続けないといけない」
◆国を左右する方針、次々と「閣議決定」で
集団的自衛権の行使容認の他にも、この10年で国の行方を左右しかねない大きな問題が閣議決定で決められてきた。
第2次安倍政権では、武器輸出を容認する「防衛装備品の移転三原則」(2014年)、岸田政権下でも安倍氏の国葬(2022年)、
敵基地攻撃能力の保有を打ち出した安保3文書改定(2022年)、次期戦闘機の第三国輸出方針(2024年)などだ。
山口大の纐纈( こうけつ ) 厚名誉教授(政治学)は「特に外交防衛の問題については、閣議決定が常態化した。
バイパスを通るように、国会での議論がスルーされ、行政主導で政策が決まる。その起点が集団的自衛権の行使容認だった」と指摘する。
その意図については、「きちんと議論して民意を読み込もうとすれば、時間はかかり、原案も修正することになる。
閣議決定なら迅速に当初案通りに決めることができ、かつての日米安保改定期のような国民運動も回避できる。
国防は相手国との関係もあり、政府にとってはこの方法が都合が良かったのだろう」とみる。
沖縄国際大の前泊博盛教授(日米安保論)も「敵基地攻撃能力の問題や、『異次元の軍拡』と言われた
大幅な防衛予算の増額も閣議決定で決まった。全てが閣議決定なら、議会はもういらないことになる。
議会制民主主義の崩壊だ」と批判。その上で、「よらしむべし、知らしむべからず」の政府のこうした体質は、
やはり国防や安全保障問題に顕著に表れると指摘する。
沖縄では米兵が少女に暴行したとして3月に起訴されていたが、国は県に報告せず、報道により6月に初めて発覚した。
沖縄県議選への悪影響を考慮して公表を控えたのでは、との疑念も広がっている。
「知らせなければならないことが隠蔽(いんぺい)され、国民が主権者としての能力を?奪されている。
そういうことがまかり通るようになってしまった」と問題提起する。
◆「議論しない」「説明しない」自民党に定着
議論しない、説明しない、という振る舞いは、閣議決定に限らず、さまざまな政治の場面で目立つようになった。
例えば予算編成で、国会審議を経ず内閣が自由に使える予備費や基金が乱用されるようになった。
批判的な質問をはぐらかす答弁は「ご飯論法」と呼ばれ国会審議で繰り返される。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「第2次安倍政権で、官邸の指示一つで全てが動くようになった結果、
官邸が決めたことに批判したり注文を付けることがなくなった。
議論不要論が自民党で定着し、議論する文化そのものが消えてしまった」と嘆く。
◆デスクメモ
閣議決定は全員一致が原則だ。反対して罷免された閣僚もいる。
「桜を見る会」を巡り「首相夫人は私人」という「これも?」と感じる閣議決定もあった。
何かにつけて漂うのは、異論を封じ、数の力で押し切りを図る近年の政権の姿勢。
民主主義が骨抜きになる危険が膨らんでいる。(北)
以上