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★「検討」だらけの政治資金規正法 佐々木毅さん「寒々しい風景」
2024年6月19日 21時00分
自民党派閥の裏金事件を受け、政治資金規正法改正案が19日成立した。
「平成の政治改革」の立役者は、「令和の政治改革」をどう評価するのか。
当時、民間政治臨調の主査として議論をリードした佐々木毅・東大名誉教授に聞いた。
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リクルート事件は同社側から誰にいくら渡ったかが焦点だったが、今回は政治家が自ら裏金作りをしていた点でより深刻である。
しかし、後始末ができたとは思えない。
政治とカネの問題では、細部に悪魔が宿り、抜け穴となる。
今回はやたらと「検討」が多く、規制力のある法律になったと言えるか疑問だ。
ブラックボックスと批判されてきた政策活動費の10年後の領収書公開も、何をどう出すのか分からない。
監査を担う第三者機関がしっかり設計されていれば、後から不備を補える可能性もあったが、
そのあり方すら「検討」では、何をか言わんや。永遠に店晒しにされる恐れもある。
●最後まで見えなかった改革の意思
平成の政治改革で、自民党は問題を大きく広げ、金権派閥政治のあり方そのものにメスを入れようとした。
1989年の政治改革大綱は、後藤田正晴・元官房長官が中心になってまとめた。
かつての自民党には、派閥政治とともに、党派を超えて国家プロジェクトに取り組む力があった。
それに比べて今回は、政治改革を進めようとする政治の意思が、最後まで見えなかった。
岸田文雄首相はじめ党執行部には、問題をできるだけ絞り込み、テクニカルに処理しようとする姿勢が目立った。
首相は「岸田の一撃」とでも言うべき、一風変わったリーダーシップを発揮した。
派閥の解散や、政治倫理審査会への出席を率先して宣言し、最終盤では公明党や日本維新の会とトップ会談で法案を修正した。
だが、調整なき「一撃」に実効性はない。「検討」だらけの法案が物語っている。
党存立の危機にあって、党が動かない、派閥も動かない、首相以外に役者がいない。寒々とした風景を見せつけられた。
平成の政治改革で「政党中心」をめざした者としては、まさに政治の「失われた30年」の姿を見る思いだ。
●右派ポピュリズム勢力、台頭の可能性も
これで一件落着と思う人は少ない。自民党は次の総選挙で、有権者から裁かれるだろう。
今や欧米政治は、右派ポピュリズム勢力の台頭など地殻変動の波に洗われている。
日本におけるその可能性をも念頭に置きつつ、緊張感を持って、「次なる政治」を展望しなければならない。
ささき・たけし 民間政治臨調の主査として、「平成の政治改革」の議論をリードした。
東京大学名誉教授(政治学)、元総長。令和臨調(令和国民会議)共同代表。
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