23/12/07 21:15:21.20 +z9qd4Kq.net
つづき
5.数学研究の心構え
佐籐先生は「すぐ追い返したい所だが研究室を一つ使って良いから一週間したら帰りなさい」と言われ,更にオロオロする私に研究の心構えを教えて下さいました。「朝起きた時に,きょうも一日数学をやるぞと思ってるようでは,とてもものにならない。数学を考えながら,いつのまにか眠り,朝,目が覚めたときは既に数学の世界に入っていなければならない。どの位,数学に浸っているかが,勝負の分かれ目だ。数学は自分の命を削ってやるようなものなのだ」と言われ,追いつめられた私は,まさにこれを実行しました。すると一週間で未解決問題の一つが解けてしまいました。佐藤先生に見せに行くと「君に出来る訳がない。どうしても正しいと言うなら,これが成り立つ筈だから確かめてみなさい」と言われ三日かけて再び持っていくと,それからは佐藤先生は毎日6時間以上に及ぶ個人指導を始めて下さり,私をグイグイ引き上げて下さいました。
6. 追記
このおかげで,二ケ月後には未解決部分をすべて解決して,既約概均質ベクトル空間の分類を完成する事が出来ました。東京へ戻ると,岩堀長慶先生が,「よくつぶれなかったね。佐藤君のところへ行って,つぶれた人もいるのだよ」と言われ,つぶれそうな気持ちに何とか耐えられたのは,武術による気力のおかげだと思いました。もちろん一般的に体力があれば数学が出来る,という訳ではなく,私の場合は,集中力と持続力の鍛錬で得た武術的エネルギーを,佐藤先生のもとで,うまく数学的エネルギーに変換出来た,という事だと思います。
学部4年の頃は武術に夢中で,数学の勉強は全く不十分でした。
(引用終り)
以上