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[時代の証言者]天文と化学を結ぶ 岡武史<17>霜田先生との出会い
2023/11/28 05:00
天文と化学を結ぶ 岡武史
化学教室のつまらない講義には落胆しましたが、3年の途中で森野米三教授の研究室に入ると、居心地がよかった。森野先生は、戦後の困難な時代から物理化学の先進的な実験に取り組んでこられ、化学教室の中では人間的にも一番だと思った。素晴らしい人がたくさん研究室に集まっていました。
その筆頭は、2学年上の広田栄治さんです。僕が研究室に入った時は大学院生でしたが、学部生の頃から天才的な論文を書いていた。あんなにできる学生は、僕がシカゴ大学で教えるようになってからも会ったことがありません。広田さんに教えてもらい、一緒に理論の仕事をしたのは、非常に面白かった。
《広田氏(93)は分子科学研究所などの名誉教授。日本学士院賞などを受賞し、総合研究大学院大の学長を務めた》
森野研究室の専門は、分光学です。物質に光を当てて、散乱されたり吸収されたりする様子を測定します。その結果を量子力学に基づいて解釈し、分子の内部で働く力を探るというのが、大きな研究テーマでした。僕は、「ラマン分光」という手法の実験課題を与えられました。
分子ごとに未解明の問題はたくさんあります。それを調べるのは、化学的には重要なことです。ただ、僕はそういう実験に興味を持てなかった。既に確立された手法をいろんな分子に応用する実験より、何か物理的に新しい仕組みや現象に挑むような研究をしたかったのです。
ちょっと腐っていたところ、4年生の時に信じられないことが起きました。物理学科の霜田光一助教授の研究室から、大学院生の平川浩正さん(後に東大教授)と宮原昭さん(後に核融合科学研究所名誉教授)がやって来て「霜田研でマイクロ波分光をやらないか」と言うのです。マイクロ波分光は、戦後活発になってきた新しい技術です。
僕にとっては渡りに船ですが、よその研究室へいきなり乗り込んできて学生をスカウトしていくなんて、普通ならとんでもない。霜田先生が作ったマイクロ波分光の装置を、森野先生も導入したいと考えていたので、先生方の間で連携の話がついていたのでしょう。東大は偉い先生同士、張り合ったりして協力できないことが多いんだけど、若かったお二人の人柄でうまくいったんですね。両先生には本当に感謝しています。
《大学院の研究は、霜田研で行うことになった》
僕は、特に信じている宗教はありませんが、人生の大事なタイミングで神様が最もいいようにしてくださっていると思ったことが何度もあります。その中でも一番幸せな出来事が、霜田先生との出会いでした。それがなかったら、今の僕はありえない。研究者・岡武史のすべてが、ここに始まりました。(分光学者)