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「n 次元球面 Snにホモトピー同値な閉多様体は Snに同相であろう」という n 次元ポア
ンカレ予想は,歴史的には n 5 のときスメイル, n = 4 のときフリードマンによって
肯定的に解決されました.n = 3 の場合には 1970 年代後半になって,サーストンが幾
何化という新たな概念を導入することにより「3 次元閉多様体は 8 種類の幾何構造を
もつピースに標準的に分解されるであろう」という幾何化予想を提唱し,3 次元ポア
ンカレ予想をも包摂する新たな枠組みが提出されました.さらに 2003 年ころにペレ
ルマンは,ハミルトンによるリッチフローの研究をさらに発展させる形で,このサー
ストンの幾何化予想を解決し,その系として 3 次元ポアンカレ予想を肯定的に解決し
ました:
[P1] G.Perelman, The entropy formula for the Ricci flow and its geometric applications,
arXiv: math/0211159.
[P2] –––– , Ricci flow with surgery on three-manifolds, arXiv: math/0303109.
[P3] –––– , Finite extinction time for the solution to the Ricci flow on certain three
manifolds, arXiv: math/0307245.
本書は,上記3編の論文とクライナー・ロットによる記事 B.Kleiner & J.Lot, Notes on
Perelman, arXiv: math/0605667 を参考に,ペレルマンによる幾何化予想解決の詳細を
丁寧に解説したものです.内容的には,リッチフローの基礎理論から始めて幾何化予
想の解決に至るまで,研究者を志す大学院生やある程度の予備知識をもつ数学者を念
頭に書かれたハイレベルのテキストで,本書のあちこちに著者の創意と工夫が垣間見
えます.序文で著者も強調しているように,上記3編の原論文を手元におき比較対照
しながら本書を読むことが最もお勧めです.