22/04/12 16:40:09.66 QwXooT/Y.net
>>260 つづき
§4.2. 副有限基本群への絶対ガロア群の忠実な外作用
前節(§4.1)の外部表現 ρX については様々な角度から多種多様な研究が行なわれてい
るが、ρX について知られている最も基本的な事実の一つは次の結果([HM], Theorem C を参照)である
定理:数体 F 上で定義される双曲的代数曲線 X に付随する自然な外部表現 ρX : GF → Out(πb1(X)) は単射になる
同種の「単射性」に関する定理は、「穴が開いている」=「コンパクトでない」双曲的
代数曲線の場合には、既に [Mtm] で証明されていて、[Mtm] も [HM] も、一番最初に Belyi
氏によって発見された、射影直線 P1 から三点を抜いて得られる双曲的曲線の場合の単射性に帰着させることによってより一般的な双曲的代数曲線の場合の単射性を証明している。
一方、上記の 定理 のようにコンパクトな双曲的代数曲線の場合にこの種の単射性を示すこ
との意義は、 §3.2 及び §3.3 で解説したように、コンパクトな種数 g の位相曲面と数体の絶対ガロア群には、「二次元的な群論的絡まり合い」という
深い構造的類似性があり、そのような類似性を持つ、一見全く異質な数論的な対象と位相幾何学的な対象を関連付けていることにある
つまり、上記の 定理 は、数論的な方の「二次元的な群論的絡まり合い」が、その自然な外
作用によって位相幾何学的な方の「二次元的な群論的絡まり合い」に忠実に表現されてい
ることを言っているのである。別の言い方をすると、純粋に「可換環論」の視点(=つま
り、もっと具体的な言葉でいうと、初等的な加減乗除の範疇)で考察すると、数体と双曲的
代数曲線はいずれも次元 1 の対象であり、しかもその環論的な構造(=つまり、正に「加
減乗除」の構造)は全く異質であるが、ガロア群や副有限基本群の「二次元的な群論的絡
まり合い」を通して両者を考察することによって、(§3.2 及び §3.3 で解説したような)深
い構造的な類似性が浮かび上がり、また上記の 定理 の単射性によってその両者の繋がりを
極めて明示的な形で定式化することが可能�