22/04/12 16:35:08.17 QwXooT/Y.net
>>259
つづき
P20
位相曲面の場合、 §2.3 で解説した普遍被覆のような(一般には無限次の)被覆等、様々
な被覆が存在するわけだが、
多項式で定義される「代数的な世界」に留まろうとすると、
有限次の被覆しか扱うことができない。
つまり、代数曲線 X によって定まる位相曲面の(連結な)有限次被覆は、元の X と同様、
代数曲線として自然に定義されるが、無限次被覆については同様な性質は成立しない。
代数曲線 X の有限次の被覆が代数的に定義されるということは、 §2.3 で取り上げた「副
有限基本群」 ‘πb1(?)’ は X によって定まる位相曲面に対して定義でき、しかもそれを、
ある代数曲線の族に出てくる
それぞれの代数曲線の(有限な!)被覆変換群たちの成す
系の逆極限として扱うことができる
ということである。この副有限基本群を
π^1(X)
と表すことにする。
次に、X が数体 F 上で定義されているとしよう。すると、先程の「代数曲線の族」に
登場する各々の代数曲線たちも、(F 上で定義されるとは限らないが)F の適切な有限次拡
大(⊆ Q)の上で定義されることは簡単に示せる。従って、F の絶対ガロア群 GF を、こ
れらの代数曲線の定義方程式たちにあらわれる係数たち(= Q の元!)に作用させること
によって、GF を上述の「代数曲線の族」に作用させることができる(図8を参照)。
副有限基本群 πb1(X) は、厳密にいうと内部自己同型を除いてしか定義されないものなの
で、このような GF の「外作用」(outer action) によって
ρX : GF → Out(πb1(X))
のような形の自然な準同型=「外部表現」(outer representation) が定まる。この GF の
πb1(X) への外作用は、
数体の数論(= GF)と位相曲面の位相幾何(=副有限基本群 πb1(X))という、
一見全く異質な二種類の数学的構造を関連付ける
重要な研究対象である。
つづく