21/07/18 20:39:48.17 ycKpVVK0.net
>>259
つづき
これら (まったく異なる定義による) 加群たちは, 実際, しばしば “Zb(1)” という同一の記
号で表されます. 従来の数論幾何学で, 何故そのような記法が許されているのか, あるい
は, 何故そのような記法を採用しても本質的な齟齬が生じないのか, と言いますと, それ
は, もちろん, 上記の加群の間に自然な同一視/正準的な同型が存在するからです. 例とし
て, (a) と (b) の円分物に対する従来の自然な同一視/正準的な同型の構成を復習しましょ
う. 直線束の 1 次 Chern 類を考えることによって得られる射 Pic C → H2´et(C,Λ(Ω)) が
自然な同型 (Pic C/Pic0C) ○xZ Zb~→ HomZb(Λ(C),Λ(Ω)) を定めます. これにより, 階数 1
の自由 Z 加群である Pic C/Pic0C の “次数 1 の直線束が定める元” という正準的な自明
化から, 自然な同一視/正準的な同型 Λ(C)~→ Λ(Ω) が定まるのでした。
この “円分物の自然な同一視” に関して, 我々の議論において重要な意味を持つ事実
の 1 つは, 円分物の間のそのような自然な同一視/正準的な同型は, 考察下の設定の “環構
造” から生じている, ということです. つまり,
従来当たり前のように行われている円分物の間の同一視は, スキーム論に代表さ
れる “環論的枠組み” のもとで行われる行為であるということです.
それでは, 遠アーベル幾何学に代表される “群論的枠組み” において, 円分物の間のその
ような同一視はどうなるのでしょうか. この場合, そういった同一視は少なくとも直ちには
存在しません。
(引用終り)
以上