23/02/05 10:54:54.85 XfMj3WNk.net
>>216
つづき
層の茎
詳細は「茎 (層)」を参照
層
Fの茎 (stalk) Fx は、点 x ∈ X の「まわり」の層の性質を捕らえる。ここに、「まわり」の意味は、概念的に言うと、その点のいくらでも小さい近傍を見るということであるが、もちろん、単独の近傍では十分小さくないので、ある種の極限をとらなければならない。
自然な射 F(U) → Fx は F(U) の切断 s をその芽 (germ) へ写す。
歴史
層の概念が最初にはっきりと現れたのは、第二次世界大戦中のジャン・ルレイによる偏微分方程式の研究だと言われている。その後、アンリ・カルタンのセミナーで形式的な整備が進められた。
なお、アンリ・カルタンをはじめとするフランスの数学者達の層の解明は、岡潔が見出した不定域イデアルという概念をも基にしている。岡の複素関数論のイデアの不定域イデアルが基本内容を構成しそれを取り出し形式化したものが連接層の内容とされる。
さらに任意の係数体上の多様体にコホモロジー理論を構築することを目的の一つとして、1955年にジャン=ピエール・セールによって代数幾何学に層の概念が持ち込まれた。アレクサンドル・グロタンディークによりこの考えが推し進められ、スキーム上有意義な「層」を表現しうるトポスの概念が得られた。ほかに層が決定的に用いられる理論として佐藤幹夫らに端を発する偏微分方程式系の解析(D-加群の理論)があげられる。
脚注
1.^ 英語で麦類の穂束、書類の束、矢の束などを意味する (sheaf - Wiktionary)。
2.^ P191 第7章 層 数学原論 斎藤毅著 東京大学出版会 2020年4月10日 ISBN 978-4-13-063904-0
3.^ 層という訳語の由来は仏語 Faisceau のあとの方の 'ソー' をとったというのが一つの根拠である。
Faisceau の元来の意味は束 (タバ) である。'群の束' (X 上に配置された) の意である。
ところで、これを横に見ると地層のような層になる。
そこで、垂直を水平におきかえて層と訳してみたのである。
この訳がよいか、悪いか、わが国で定着しているかどうか知らないが、この訳語の発案者として、その由来を記しておく。(秋月 1970, p. 176)
つづく