23/02/02 21:00:46.46 IR67z+yT.net
>>141
つづき
1. 序
1994年にハーバード大学の物理学者ヴァッファから電子メールが送られてきて, 頭を思いっきり殴られたような衝撃を受けたことを, つい昨日のように思い出します. そのメールの内容は次のようなものでした. 4次元多様体 X の上のインスタントン数が n のインスタントンのモジュライ空間 Mnのオイラー数をe(Mn)としたときに,
(1) Z(q) = Σn=0∞ e(Mn) qn
という関数を考えます.
ここで, q は不定元です. (収束の問題は考えず,単なる形式的べき級数と考えています.) このとき, ヴァッファとウィッテンは, 上の関数が保型性を持つという予想をしていて, ある多様体の例, 当時私が研究していたALE空間という4次元多様体の場合に成立しているかどうかを知りたい, と尋ねてきたのでした. (使っている専門用語はおいおい説明して行きます. また, 細かい技術的なことを省くために上の記述にはいろいろと嘘があります.)
このように, 数列(今の場合は e(Mn) (n=0,1,...)のこと)が与えられたときに,上と同じようにして不定元を導入して級数として定義される関数のこ とを母関数といいます. 数列を各項ごとに調べるよりも一度に扱った方が物事が見えてくることが多いので, 母関数を導入して, その性質を調べることは数学の常套手段です. その顕著な例である保型形式を次の章で説明します.
つづく