20/09/28 22:57:35.99 EmW1PHnn.net
>>701
つづき
原因1:複数の定義が存在する
原因の一つ目は(見かけ上)定義が複数存在することが挙げられます。現在、書店で購入できる書籍やネット上の講義資料で見られる定義で主なものは次の3つです。
1.基底の取り換えに伴う成分の変換規則によるもの、
2.多重線型汎関数によるもの、
3.普遍性によるもの。
定義1は物理(連続体力学・一般相対論など)や工学等で良く使われている定義、定義2は主に微分幾何学や一部のベクトル(テンソル)解析の書籍で見かける定義、定義3は代数学やそれらの概念を使う分野で見られる定義です。
これらの定義の関係ですが、もっとも一般的なものは定義3で、定義2は定義3で与えられるものの具体的な表現の1つ、定義1は定義2または定義3で与えられるものについて2通りの成分表示をしたときに、それらの間に成立していなければならない関係式、というようになっています。
それぞれの定義にはメリットとデメリットがあります。
まず定義1ですが、あまり深く考えず目先の計算を機械的に実行することができる一方、テンソルの実体については一切言及せず、見かけの量である成分しか登場しません。当然、計算は出来ても何をしているのか意味はさっぱり分からないことから、誠実なユーザーほど「テンソルとは何なのか?」という根本的な疑問に苛まされることになります。また「2階のテンソルは行列」や「一般のテンソルは多次元配列」という誤解を生みやすいということもデメリットの一つです。
定義2は、テンソルの実体についてある程度は言及できるのですが、双対空間上で定義された多重線形汎関数としてテンソルを実現しなければならないことから「なぜ双対空間を考えなければならないのか?」という新たな疑問を抱えることになり、こちらも本質的な解決にはなりません。
つづく