20/04/26 07:58:58 7O7a3CML.net
>>395
つづき
3 御利益
本当は 1 節, 2 節 に引き続いて 2 節 で説明したように可換環を幾何的対象と見倣して理論を作ることの御
利益について (例えば、ガロア理論というのは幾何的なものであるとか、ゼータ関数について、または Brauer
群についての応用について etc.) の話をしたかったのですが、どうも自分で文章を読み返してみると、「分る
人には当たり前、そうでない人には意味不明」のことを口走っているようなので、取り敢えず整数論をかじっ
ている人には面白いだろうと思われる例を一つだけ挙げるに留めたいと思います。
一応、幾何的な解説を加えておきます。正規というのは局所的な概念です。(一次元ネーター環では正規も
正則も同じなので、「接戦が引けるようなもの」と思ってよい。ここらについては Appendix 付録 B を参照。)
さて、m を割る素数を p1, . . . , pr とすると、図で書けば次のようになっています。
図(この板には書けないので略)
つまり、SpecZ[ζm] から SpecZ への射は (pi) 達以外の所では「局所同型」になっているのです。(A) でやっ
ているのは、各 (pi) 以外の所では問題ないですよということを式で言い換えただけです。で、分岐が起きてい
る (pi) 達の所だけが問題なのですが、ここは Eisenstein 多項式を使えばクリア出来ますよというのが (B) で
す。このように幾何的に考えると見通しが良くなります。これがこの文章で一番言いたかったことです。(註:
上の図は、実はかなりいい加減な図です。本当は SpecZ[ζm] はこのように分かれてはいない一本の曲線なの
ですが、(pi) で分岐しているということを強調するために、こう書きました。)
つづく