20/04/07 20:17:01.15 rx19SrZa.net
ベートーヴェン少年やブラームス少年はそこまで「いいとこ坊ちゃん」で育ってはいない。
ピアノの即興演奏家としてウィーンで活動を始めたベートーヴェン青年がようやく「作曲家」という道の入口に辿り着いたのが30歳。
ブラームス青年が「交響曲」の世界に踏み込んだのは40歳過ぎ。
「十代で才能を発揮して、二十代でいっぱしのプロ」というタイプの天才型作曲家の系譜は、前期ロマン派を境に途絶えてしまう。
20歳過ぎてもさっぱり才能の片鱗を見せなかったような怪しい経歴の「天才」が俄然多くなる。
絵画だの演劇だの科学だのにうつつを抜かし、モラトリアム期間には法律や医学を勉強し、ある時、突然「音楽」に目覚める…というのがパターンだ。
確かにスタートは遅いが、一旦道を定めるとその吸収力が驚異的なのも共通項。ほぼ数年で最低限の音楽の基本はマスターしてしまい、
基礎に縛られないぶん革命的な理想に燃え、下積みの苦労を経て20代後半か30歳近くなってようやく楽壇に登場。
その後は明確な個性を持って音楽界に作品を提供し続ける。
彼らの根幹にあるのは、幼少時に植え付けられた「直感」などではなく、厳しい生存競争の中で身につけた「戦略」だ。
こういう作曲家たちをモーツァルトやシューベルトのような才能と一緒に「天才」の一言で括りたくない、と言うのが本音。
全く違ったベクトルの才能だからだ。
かくして、この種の「戦略家」たちが跋扈し始める時代以降、もはや無垢な「天才」たちに出る幕はなくなったとも言える。
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