19/10/14 17:57:20.44 w6tqRMw5.net
>>819
つづき
アーベルはガウスの理論の根幹をなす数学的思想の泉から直接、アーベル方程式の概念を取り出しましたが、ガロアはガロアでガウスの理論の「証明の構造」を学び、ガウスの理論をその雛形と見ることを可能にする大きな理論を構想したのでした。
ガロアの第一論文はガロアが書いた一番はじめの論文というわけではありませんが、「第一論文」と呼ぶ習わしになっています。
1832年5月30日早朝の決闘の前夜、友人オーギュスト・シュヴァリエに宛てた有名な遺書において、ガロアは冒頭で「(これまでの研究を元手にして)三篇の論文を作成することができると思う」と述べ、続いて各論文の素描を試みました。
「第一論文はもう書いた」と言われているが、これは上記の代数方程式論に関する論文を指しています。
ガロア理論により、素次数既約方程式の代数的可解性の判定条件が手に入ります。
《通約可能な因子をもたない(註。「既約」という意味です)素次数の方程式が冪根を用いて解けるためには、そのすべての根が、それらのうちのどれかふたつの根の有理関数になっていなければならず、しかもそれで十分である。》
ガウスに端を発し、アーベルが洞察した代数的可解性の基本原理は、ガロアに継承されてひとつの完結した姿形を獲得したのでした。
ガロアが言及しているもうひとつの応用例は、楕円関数論におけるアーベルの予想の証明である。アーベルは論文「楕円関数研究」において、モジュラー方程式は一般に代数的には解けないであろうと予想しましたが、ガロアはこれを受けて次のように述べています。
《代数方程式論のさまざまな応用のうち、一部分は楕円関数の理論のモジュラー方程式に関係がある。モジュラー方程式を冪根を用いて解くのは不可能であることが証明されるであろう。》
楕円関数論と代数方程式論の関係は密接かつ不可分であり、しかもアーベルの予想の証明こそ、ガロアの理論の眼目なのでした。ガロアの言葉にはガウス、ルジャンドル、アーベル、ヤコビなどの手になる浩瀚な楕円関数論の全史が凝縮されていて、印象は深遠です。さながら数学の神秘の淵をのぞき見るような感慨があります。
(引用終り)
以上