19/04/15 07:29:21.38 GY+CIXbC.net
>>522
つづき
さて,本稿を執筆するにあたって,筆者は二つのことを目標とした.まず一つ目
は,エタールコホモロジーの理論そのものの概説である.エタールコホモロジーに
ついては SGA ([SGA4], [SGA5], [SGA7], [SGA4 12]) というこの上ない基本文献が
あるうえ,そのダイジェスト版としても [SGA4 12, Arcata] という極めて優れた文献
がある(エタールコホモロジーの理論の基礎が,証明付きでたった 70 ページ程度で
紹介されている!).そのため本稿の前半部では,エタールコホモロジーの導入部
分や各基本定理の間の相互関係などを強調することで,これらの文献へと円滑に入
門できることを目標とした.二つ目は,エタールコホモロジーを用いて如何にして
Galois 表現を構成するか,また,如何にして構成した Galois 表現を調べるかをで
きるだけ一般的な立場から紹介することである.Galois 表現の理論へのエタールコ
ホモロジーの応用が盛んになったのは SGA 以後であることもあり,エタールコホ
モロジーを用いて Galois 表現を調べる技術をまとめた文献はほとんどないようで
ある.そのため本稿の後半部では,このような内容についてなるべく詳しく解説す
ることにした.理解の助けになると思われる具体例や練習もいくつか入れてある.
後半部を読むにはある程度コホモロジー論に対する慣れが必要かもしれない.本稿
で初めてエタールコホモロジーに触れる読者の方は,3.3 節まで読めば十分だと思
われる.逆に,SGA の内容を把握している読者の方は,第 1 節は飛ばしても支障
はないはずである.
なお,コンパクト台コホモロジーや係数理論と 6 つの関手についてなど,本稿で
一切触れることができなかった重要な概念もいくつかある.これらについては適宜
文献を参照していただきたい.SGA, [Del3], [BBD] といった定番の他,[KW] もな
かなかよい本だと思う.
この記事が少しでも読者の方々のエタールコホモロジーに対する理解の助けとな
れば幸いである.
(引用終り)
以上