19/04/05 11:49:01.87 VayTWyHw.net
>>185
つづき
Tohoku
これは、東北大学の「東北数学雑誌」で 1957
年に出版された “Sur quelques points d’algebre
homologique(ホモロジー代数のいくつかの点につ
いて)” の通称である。専門家なら、Tohoku 大学
が Sendai にあることなど知らなくても、グロタン
ディークのTohoku で通じてしまう。
この論文では、層、圏、コホモロジーという、
20 世紀の抽象数学の特徴的な問題が扱われている。
EGA
名高い「代数幾何原論」である。セールが、論
文「代数的連接層」で局所環つき空間として展開し
た、任意標数の代数閉体上の代数多様体の理論の、
巨大な一般化である。
数学の対象とは構造のついた集合であるという、ブルバキの数学観
が、時代遅れになっていることがわかる。グロタン
ディークにとっては、数学の対象とは、表現可能な
関手を表現する圏の対象である。
数学の対象は、それが何からなりたっているか
ではなく、どういう役割を果たしているかが重要だ、
という視点の転換がそこにある。アファイン・スキ
ームも、局所環つき空間として構成されるのだが、
その存在理由は、大域切断という関手の随伴関手で
あるところにある。対象それ自体よりも、対象から
対象への射のほうが重要だ、といいかえてもよい。
この視点にたつグロタンディークにとって、ス
キームの点とは、位相空間としての点ではない。そ
れは、ほかのスキームからの射である。これは、シ
ュヴァルツの超関数が、試験関数の空間の双対とし
て定義されることを思い起こさせる。
一方、環つき空間としてのアファイン・スキー
ムの定義では、にわとりとたまごのように、関数と
点のどちらが先かをみるのも面白い。ここでは、関
数の方が先にある。点とは関数の値が定まる場所、
関数の点での値は体の元と考えることで、関数の定
義域としてのアファイン・スキームは素イデアルの
集合である、という定義に導かれる。
つづく