18/01/10 15:46:14.03 vsfEZQC9.net
>>356 つづき
「……あの、じゃあ、あなたは、○○学校のさやかさんじゃないってことですよね」
「はい、そうです。エミちゃんという友達がいたので、その子からかと思って……」
「え、あなたもエミちゃんって友達がいるんですね……すごい偶然ですね……」
「そうですね、えへへ……」
さっきまであんなに親しく話していたのに、赤の他人と分かった瞬間に敬語でおそるおそる話している自分たちが不思議だった。
私はこの奇妙な間違い電話のことを、なかなか忘れることができなかった。なぜ、赤の他人である私とエミちゃんは、三十分以上も仲良く会話することができたのだろうと何度も思い返した。
先日、AIの番組に出演させていただく機会があった。テーマは「会話」だった。そのとき、ふと思った。私はあのとき、AIだったのではないか。エミちゃんの発した言葉に、いかにもそれらしい相槌を打つ。ただそれだけで、私たちは三十分も親しい友達のように会話をした。
実は私たちも、AIと同じような仕組みで会話をしている瞬間があるのではないか。
観(み)ていない映画を、勘違いして観たかのように話をしていた時、顔はわかるがどこで会ったのかよく覚えていない人と談笑している時、私はきっとAI的に会話をしているのだ。
それは必ずしも不誠実というわけではなく、人間の面白い一部分なのではないか。そう思うと、自分という生きものの新しい一面を発見している気持ちになれる。自分の中の「AI的部分」を、もっともっと見つけてみたくなるのだ。
(作家)
(引用終わり)