17/08/26 09:48:11.15 rK9paIyp.net
>>19 つづき
4. 物理学科へ
私はその2年生の秋に、どこに進学するか、大いに迷った。物理学だけでなく、応用物理学も、電子工学も、ロケット工学も興味があったからだ。
たしか、物理学科ではない学科を書いた志望届を提出しようと教務課に向かう途中で級友に会い、「え!嘘だろ、おまえは物理学科だろ?」と言われ(当時は物理学科の人気が高かった)、やっぱり自分は物理学科なのかなと思い直して物理学科に進学したのだった。
いい加減なものである。
物理学科の講義は、はっきり言って期待はずれだった。
講義の準備をほとんどしてこない先生も少なくなかったし、講義内容そのものも、上質なものは数えるほどしかなかったからだ。
それに何よりも、私が一番好きなのは、基礎的・原理的な問題である(と後年わかった)のに、当時の東大理学部物理学科は、そういう研究はしてはいけないし、考えてもいけない、という雰囲気が満ちあふれていたからだ。
たとえば、量子測定理論やベルの不等式について全く無知な「偉い先生」が、そういうものがいかにくだらないかを講義で力説していた。
何も知らないのに批判するというのは、今思えばお粗末きわまりないことなのだが、学生時代は影響されてしまった。統計力学の基礎的問題も考えてはいけないと、別の偉い先生が講義で言っていた。
また、今の学生さんには信じられないと思うが、量子論を重力を含むように拡張する研究も、当時の東大理学部物理学科では誰もやってはおらず、御法度ようなものだったのだ。
このように、雰囲気や講義には失望したのだが、嬉しかったのは、級友達がすこぶる優秀だったことである。級友達から学んだことは実に多かった。
そんなわけで、自分が興味を持てる研究分野を見つけることができないまま、私は4 年生になった。
愚かにも、東大物理学科だけを見て、物理とはこんなものだと思ってしまったのである(馬鹿でごめんなさい)
つづく