17/07/12 23:26:23.70 R5adeg3y.net
>>35 つづき
私はその過程でしばしばつまづき、壁は簡単には崩せそうになく思えた。これは研究者なら誰でも経験することであろう。大抵のアイデアはそこで棚上げになるのだが、幸運にもうまくいく理論を発見できた。執念が実ったところで、それを「最尤法によるアプローチ」という題で学会発表することにした。
このアプローチにより多くの利点が得られるのだが、短時間の学会発表では、もとより共感は期待できない。非正規分布を扱ううえで直截簡明と思われるこの理論も、発表後直ちに多くの人に支持されるという状況にはなかった。説明が速い拙いということもあったのであろうが、場内がシーンと沈黙してしまったのである。
気まずい沈黙ののち、まず、わざわざこのような新しい方法を考える必要があるのかという大きな変化が試みられる際には必ず出る意見があった。それに、これまで以上に新しい結果をここから導くことは果たして可能なのかという疑問もあった。
紙面を借りて回答しておくが、最尤法によるアプローチは、コンピュータを駆使して非正規分布に対する数学的推量の改良と洗練を目指したもので、これまで不可能であった非正規母集団の推測と検定が可能になる。いまだ若く未完成の部分も多いのだが、その適用範囲の広さには測り知れないものがある。
旧来のやり方を踏襲している保守的な人々もやがてこの方式を受け入れてくれるものと気長に構え、本人は意外にも楽観視しているのである。
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何年か前までは病理学なる学問を人一倍