16/12/31 14:15:13.83 VK/jj9Lp.net
>>103 つづき
しかし最終的に、私が最も才能に恵まれているのは数学と理論物理学であって、
自分にはそうした分野に進む以外の道はないと思い至りました。21歳の頃、私は、
数学と理論物理学のどちらを選択するかを決めたのですが、当時の私には、どちら
の分野についても乏しい知識しか持ち合わせていませんでした。その知識をもとに
理論物理学を選んだわけですが、その大きな理由は素粒子に魅せられたからです。
私がプリンストン大学大学院に入学した1973年の秋、素粒
子の研究は、少なくともその20年ほど前からの激動期が続いていました。ただし、
その表面下では変化が兆していました。現在、素粒子物理学の標準模型として知ら
れる理論が生み出されていました。本質的には現在と変わらない形式で、長い試行
錯誤の末にようやく生み出されつつあったのです。これが私が大学院に進学するわ
ずか数ヵ月前に起きたことで、デビッド・グロス、フランク・ウィルチェック、デ
ビッド・ポリツァーの3 氏によって行われました(ちなみにデビッド・グロスは、
後に私の指導教官を務めてくれることになります。)
1970年代中頃に大学院生だった私が何
に興味を持っていたのかをわかっていただくためです。簡単に言うと、私の大学院
時代、素粒子物理学の分野では、果てしない革命の時代が全盛期を迎えていまし
た。その時代がずっと続くと思っていた私は、自分もその一翼を担いたいと考えて
いました。ただ、今にして思えば、ジェイプサイ中間子を理解することから、科学
全体に変化が起きつつあることを察知できていればよかったのかもしれませんが。
事実、この新しい粒子の持つ驚くべき特性は、標準模型によって完全な説明が可能
であり、しかもそれについては、すでにいくつかの論文で予想されていたことが明
らかになったのです。もっとも、そうした予想を行った論文がどれほど知られてい
たのかはわかりません。実際私はそれらの存在を知らなかったのです。
つづく