15/07/26 12:25:20.81 yHhmJJ+L.net
>>357 訂正 350→356
つづき
当初は、この方法でフェルマーの最終定理のすべてのケースが解決すると思われてたんだけど、残念ながら、指数nによっては簡単にはいかないことが判明した。
それは、こういう「虚数世界に拡張した整数(1のべき乗根と有理数からなる体の整数環)」では、素因数分解の一意性が成り立たない場合がある、という恐ろしく直観に反するケースが出てきたからだったのだ。
そこで、クンマーは素因数分解の一意性を回復するために、もっと深い分解である「素イデアル分解」というのを編み出したのである。クンマーが導入した「形式的な数」にすぎないイデアルを、集合を使って具体物として成立させたのがデデキントの偉大なる貢献なのであった。
物語的に言うと、我々の日常の中に息吹く「整数」は、「虚数世界の中にもいるんだよ~」とささやきかけてくる。そのような整数の本性を捉えるには、素数ではなく「素イデアル」というものを考えるのが「自然な道筋」ということになるのだ。
つまり、素数という素材の本性はむしろイデアルという形式の中にある、ということだ。
このようにイデアルが数論の中で発展する一方で、代数幾何の中でもイデアルが重要な概念となることがみつかることとなった。これに気がついたのは、19世紀から20世紀にかけての数学者ヒルベルトだった。
当時、多変数の代数方程式たち(例えば、直線の方程式ax+by+c=0とか円の方程式(xの2乗)+(yの2乗)-c=0とか)の共通解の点集合の研究が進められていた。
つまり、高次の連立方程式の解集合が、空間の点集合としてどんな性質を持っているかを探し求めていたのである。例えば、n次方程式とm次方程式の共通解は一般にはmn個になる(ベズーの定理)など。
そこで、「連立方程式を考えるよりイデアルを考えたほうがより適切である」ということにヒルベルトが気付いたのだ。
つづく